世界最大手「フェースブック」も日本進出準備
SNS関連物色の戦線拡大中
「ソーシャルゲーム」「ソーシャルアプリ」という耳慣れない言葉が株式市場を駆け巡る。インターネット上で、友人・知人間のコミュニケーション手段を構築するために成立したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の成長速度に一服感が見えはじめた時、突如現れた“新材料”だ。目新しいキーワードだけに、株式市場でもかなり注目度の高いキーワードとなっており、実際、国内でのパイオニアといえるディー・エヌ・エー(2432)とミクシィ(2121・東マ)の2社の株価は、この取り組みの巧拙で明と暗が鮮明に分かれた。全体相場が方向感を欠く中では、個別の材料物色における思惑と連想の増幅装置として機能している面もあり、軽量低位株が大きく値を飛ばす背景になっている。
クルーズ、ジー・モードから日本一ソフト、IMJへ
「ソーシャルゲーム」「ソーシャルアプリ」という言葉が株式市場でスポットライトを浴びたのは2009年。そして、ミクシィが「mixiアプリ」をスタートさせ、その効果が指摘され始めた夏以降には、この材料が一般に認知されたと言っていい。
携帯電話向けSNS「モバゲー」でミクシィと競合するディー・エヌ・エーも、自社開発のソーシャルゲームを秋以降に投入して以来、サイト閲覧数の増加の勢いが増し、まざまざとその効果を見せつけた。
「アメーバブログ」を収益化するための課金システムとしてサイバーエージ(4751・東マ)が、運用し始めた「アメーバピグ」もソーシャルアプリの一種に当たり、これら3銘柄が“御三家”よろしく、09年の年末相場を盛り上げたことは記憶に新しい。
そして、この流れに即応し追随したのは、基本的に少額、無料で提供されるソーシャルアプリ、ソーシャルゲームを収益化するための課金システムを提供する業者たち。ドリコム(3793・東マ)やアドウェイズ(2489・東マ)といった銘柄の株価は、年末1カ月間だけで、いずれも約2倍程度に跳ね上がった。
新年に入り、いったん人気の勢いが沈静化したかのように見えたソーシャル関連人気だが、ここにきて各社の決算が明らかになるにつれ、期待先行で動いていた株価に、実際に利益という具体的数字がついてきたことが判明。新たな市場を創出した中核銘柄をもう一度買い直す動きが出たのと同時に、この新たな市場で将来的に活躍が期待できそうなニューカマーを探す段階に入った。
もちろん、材料に新鮮味があっても、期待先行の連想買いになるだけに、ある程度の流動性が確保され値動きに軽量感があるというのは必須条件。ゲーム開発業者として人気ゲーム「ブラウザ三国志」を生み出したAQインタラクティブ(3838)が、騰勢開始前4万円程度だった株価は、現在約2・5倍の10万円に迫るまでに膨らんだように、少額から戦線に参入可能ということも条件といえそうだ。
そして、こうしたAQIの騰勢は業務提携先でもあるベクター(2656・HC)に飛び火。ベクターは、関連物色の標的となるまでは、7万円程度で推移していた株価が、2月3日は一時25万5000円を付けるまでに大きく変動した。自社運営のゲームサイトに加え、mixiアプリにもゲーム開発業者として参入していることが手掛かりだ。
同時に、これはベクターが、中国をはじめとした新興国のインターネット市場の開拓という将来戦略を描くソフトバンク(9984)系企業の一員として、SNSやソーシャルゲーム分野から、その一翼を担うための下準備とみる向きもある。会社側も「現段階で具体的要請はないが、もし、そういう方向性が出てくるのであれば、何らかのかたちで協力していくのが自然」(ベクターIR担当者)としている。
こうした中で、この相場に遅れるなとばかりに動き出したのが、クルーズ(2138・HC)やジー・モード(2333・JQ)などだ。
クルーズは、今3月期第3・四半期(4―12月)の好業績発表と合わせ、ソーシャルゲーム分野へ積極的に取り組むことを表明したことから、関連人気に火が付いた。ゲーム投入時期は未定だが、「利用会員層のほとんどは18歳―23歳の女性で、いわゆる一般的なソーシャルゲームの利用層とは重ならない。先行する企業が競合とならないことから、独自路線での事業成長が見込めそうだ」(クルーズIR担当者)と自信を示しており、今後の展開が一段と注目される。
一方、携帯向けなどのカジュアルゲーム開発で実績を持つジー・モードは、既に「mixiアプリ」「モバゲー」に自社ゲーム投入を果たしており、同社の将来戦略には関心が高まるところ。会社側では「潜在力のある市場と認識。ソーシャルゲームを収益化させるための“肝”である、集客と課金システムのノウハウを早期に確立して、業界で一定の地位を確立したい。国内で戦える体制ができれば、将来的に海外本格進出も現実味を帯びてくるだろう」(ジー・モード宮路武社長)としているだけに、引き続き注目しておきたい。
このほか、今後、目先資金の物色の矛先がいずれ向かう可能性がありそうな銘柄群をピックアップしておく。欧米で知名度が高いゲームソフト開発会社の日本一ソフト(3851・JQ)は、足元業績不振で株価を崩したが、会社側は「現在、当社もソーシャルゲームの事業化を検討中。本当に収益が上がるのかということを念頭に置きつつ、試作品製作などを進めている。当社ゲームの特色も考えながら、国内SNS向けに限定せず、米国のフェースブックなどへの投入も視野に入れてやっていきたい」(日本一ソフトIR担当者)としており、材料浮上のタイミングを注視しておきたい。
また、新たな市場誕生は、ゲーム開発業者だけではなく、その成長を側面から支える企業群にも商機が巡ってくるチャンス。株式市場の連想買い資金もいずれ襲来するはずだ。例えば、ゲームの不具合検出のデジタルハーツ(3620・東マ)は、ソーシャルゲーム市場に注目する企業の1つ。既にmixiアプリ向けゲームを対象としたサービス提供を始めており、新たな成長分野として取り組みを見せている。
また、ウェブやモバイル環境構築のIMJ(4305・HC)は、ソーシャルゲーム分野への参入を考える企業へ対する市場参入支援事業をスタートさせたばかりだ。「低価格でのトータルサポートを提供。今後、市場拡大とともにこれから派生する新たなニーズも強まってくれれば」(IMJIR担当者)と話していた。
折から、SNS業界世界最大手、米国のフェースブックが日本法人を構える準備が着々と進展していると伝えられている。ほどなく、ソーシャルアプリを軸とした、携帯電話向けの独自サービスを展開するともみられ、業界にいよいよ“黒船来航”の時が迫る。一方で、SNS大手では唯一オープン化に踏み切らなかったグリー(3632・東マ)も「GREE Connect(仮称)」で、他社に追随する決断を明らかにした。
SNS市場を巡る状況はまさに群雄割拠。競争激化の戦国時代に、生き残るのは誰か? 果たして、下克上はあり得るのか? 株式市場はまだ、その選定をスタートさせたばかりだ。(H)
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