NSJコラム
3月12日 10:00

証券業界再編の波到来か

 岩井証券がコスモ証券買収へ



「岩井証券がコスモ証券を買収」というニュースが10日、証券界をにぎわせた。いずれも関西地盤、兜町と並ぶ金融街・北浜に縁の深い証券会社同士の合併話だが、それのみならず、岩井がコスモを買うという、その主従関係の意外感が話題を集める一因ともなったようだ。

  ファンドや外資を押し退けて“虎の子”獲得目指す


岩井証券(8707)は、創業年を1944年に定めているが、その起源は1915年設立の岩井商店にまでさかのぼることができる、歴史ある証券会社だ。大阪を地盤にし、対面セールスに加え、早くからネット取引を育成してきたことでも知られる、同分野の先駆け的存在。一貫して、個人向けを中心に業容の拡大を進めてきた。

大株主には吉本興業(発行済み株式の4・96%を所有)や泉州銀行(4・83%)、いかにも地元密着の色が濃い証券会社といえるが、現在は日本株だけではなく、FX(外国為替証拠金取引)やアジア新興市場の株式投資などにも力を入れている。

一方のコスモ証券は創業1918年。前身の野村商店は、証券最大手の野村証券や大和銀行(現りそな)の源流企業という由緒ある出。その後、大阪屋証券や日の出証券などへの商号変更を経て、86年、現在の屋号になった。

その後、93年に、経営危機に陥った際に大和銀行の救済を仰ぐことになったが、その大和銀行の再編に絡み2004年にはCSK(現CSKHD、9737)の連結子会社に転じ、08年には同社の完全子会社となる。

岩井証券とコスモ証券の比較
 岩井証券コスモ証券
社 長沖津嘉昭金森巧
従業員数346人993人
店舗数15店舗29店舗
資本金100億400万円135億円
営業収益70億8700万円156億1800万円
※データは前期末時点。
店舗数はコールセンターなども含む

両者の事業規模を比較すると、売上高に当たる営業収益は、岩井が直近実績09年3月期で約70億円。一方、コスモの09年3月期の営業収益は約156億円。大阪地盤の証券会社の中では最大規模とされ、水戸証券や丸三証券、東洋証券、いちよし証券などと並んで全国規模の中堅証券の一角に数えられている。

今回の買収劇が最終決着すれば「これは完全に、小が大を食う“華麗なる”買収劇になる」(市場関係者)というのが、株式市場での評価だ。これを可能にしたのは、コスモの親会社CSKHDの業績不振で、グループの事業整理と経営改善策の手段として、コスモの売却話が09年秋ごろから急浮上していた。

CSK側に話を聞くと「8日時点で入札を締め切り、確かに同売却案件は最終段階にあると言っていい。ただ、(岩井証券という)特定の売却先が決定した事実はない。現在は金額も含めたさまざまな条件を比べて判断している状況だ。今期中に売却先を決定・発表できればいいが、決定を来期に持ち越し、もう一度再考するということになる可能性がないわけでもない」(CSKHD・IR担当者)と、10日夜時点では、売却先にまだ含みを残していた。

コスモ証券でも「当社のほうからはコメントできることはない。親会社CSKの発表がすべて」(コスモ証券経営企画部)としていたが、別のコスモ証券関係者は「既に身売りは公表されていたし既定路線。個人的には、元々、社として上手くグループになじめていなかったと考えているし、大方のコンセンサスも同じなのではないか。ある時を境に、社内の株式情報端末が一斉にCSK製から他社製品に取って代わったことは印象に残っている。もちろん、買い主が岩井証券という報道には驚いたが」と話した。

コスモ買収を巡っては公開入札が実施され、これまでに10社を超える企業からの入札があったとされる。国内証券業界からの参加者では、東海・名古屋から関西へも地盤を強化したい東海東京フィナンシャル・ホールディングスや、日本アジア証券やおきなわ証券を傘下に持っている日本アジアグループなどの名が取りざたされた。

投資ファンドでは、アドバンテッジ・パートナーズなどの存在も浮上。投資先のかざかフィナンシャルグループで、FX部門をFXリアル証券へ、オンライン部門をオリックス証券へ売却して、かざか証券とコスモ証券との事業統合という絵図が、現実味を帯びて語られる場面もあったほどだ。

また、一部で注目されていたのは、アジア系外資勢力の動きで、例えば、中国の証券会社に加えて、韓国や台湾、シンガポールなどの資本が本気で、国内証券業界への参入を狙っていたとされる。しかも、豊富な資金力を背景に、入札金額がかなり高額に上ったという説も流れていた。

もし、こうした難敵を抑え、最終的な買収先が岩井証券に決定することになれば、意外感の大きな業界ニュースとして受け入れられることは間違いない。そして、岩井証券は関西地盤から全国規模の証券会社に一気にステップアップする。この買収劇が玉突き的に中堅・中小証券のさらなる再編を促す可能性もありそうで、閉塞感の強い証券業界に今後、大きな変化が訪れることになるかもしれない。

岩井証券側では、10日の当社取材に対し「まだ、最終決定したという事実は認識していない。今後どういう決定になるか予断を許さない状況と考えている。もちろん、今後、正式発表できるような段階になれば、適時開示の原則に則って情報開示するが、その際はリリースなどだけではなく、記者会見なども開いて、将来像をご説明することになるのでは」(岩井証券IR担当者)としていた。(H)


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