SRIは、もう古い!?
世界の潮流は「ESG」 企業の根源的価値を評価
「SRI」(社会的責任投資)は、もう古い!?
ここ数年の世界的潮流として、年金資産運用をはじめとする株式投資分野での“全く新たな企業価値分析基準”が急速な広がりを見せつつある。
企業の根源的価値を見いだすためのもので、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の各要因を重視した「ESG責任投資」だ。
リーマン・ショックなどに現れたように、米国型金融ビジネスモデルが破たんを迎えたのも、投資家の間で、財務データ上の短期的利益追求のみ重視され過ぎたことが背景にある。海外での拡大を急ぎ過ぎたトヨタ自動車の蹉跌(さてつ)も、同様の文脈の下で語られている。
企業を取り巻く各ステークホルダー全体が利益を上げられる構造こそが、結果的にサステナブル(持続可能)な成長に結び付き、ひいては長期投資の観点での銘柄選別にも適している。これがESG責任投資の発想の原点だ。
一見、「SRI」の概念とも似通っているが、近年、エコファンドなどを通じて東京市場にもすっかり浸透してきたSRIとは、どこが違うのか。
ESG投資に詳しい、日興フィナンシャル・インテリジェンスの宮井博常務は、「SRIは、倫理面の価値観しか見ていない。純粋に経済価値から判断した場合、社会貢献したり環境に配慮する企業を組み入れ、タバコや酒などを手掛ける銘柄を除くことが投資リターン拡大につながるのか、といった批判がかねて寄せられてきた。『ESG』は、もっと広い観点から、企業の根源的価値を評価するもの」としている。米、欧の各アナリスト協会の規定した、投資判断の対象となり得る「ESG」の項目は表の通りだ。
とはいえ、日本においてはまだ、こうした概念は、ほとんど知られていないのが現状だろう。
日本の証券アナリストは約2万3000人。このうちWEB登録しているのが約1万5000人。宮井氏が、この層を対象に「ESG」のアンケート調査を実施したところ、回答を寄せたのは、わずか600人。全体の中では比較的意識が高いと思われる、この600人の中でも、ESGを「知っている」と答えた向きは、「3割程度」にすぎなかったという。
しかし、世界の動きは別だ。2006年4月、「国連環境計画・金融イニシアティブ」と「国連グローバルコンパクト」が中心となって、ESGをベースとする「責任投資原則(PRI)」を策定している。06年4月時点で、これに署名した世界の運用機関などは33機関。運用資産額で2兆ドルにとどまったが、08年5月時点での署名機関は、362機関(運用資産額14兆3000億ドル)に拡大。直近の今年2月には713機関(同18兆ドル)に達し、今後も急拡大が想定されている。
外国人の投資動向に左右される東京市場にとっても、決して他人事ではなくなってきている。
海外においてはまた、JPモルガンのリスク分析部門が独立したリスクメトリックスが、有力なESG評価機関のイノベストやKLDを買収し、今度は、そのリスクメトリックスが指数運用大手のMSCIバーラに買収されるなど、この分野の企業買収で大きな話題が続いているが、欧米においてこの分野が、それだけホットな存在だということを示すものと考えていいだろう。
ちなみに、国連のPRI署名713機関には、わずかながら、日本の3機関も含まれる。キッコーマン(2801)の企業年金であるキッコーマン確定給付年金と、フジ・メディアHD(4676)系のフジ厚生年金基金。そして、T&DHD(8795)傘下の太陽生命保険だ。いち早くグローバル指標を取り入れる運用面での意識の高さは特筆されていい。
また一般論として、海外で主流となった手法は数年を経て、国内で普及するケースも少なくないので注目しておきたいところだ。(A)
| ESG要因の情報 | |||
|---|---|---|---|
| (1)開示要求の可能性のある定性情報 | |||
環境要因(E) |
社会要因(S) |
ガバナンス要因(G) |
|
・炭素排出量、温室効果ガス:ディスクロージャー/測定と報告 |
・児童労働 |
・経営者報酬: 成功報酬/平等報酬 |
|
・地域の 利害調整 |
|||
・気候変動 企業への影響/リスク・エクスポージャー/オポチュニティ |
・人権差別 |
・ポイズンピル(毒薬条項) |
|
・ダイバーシティ: 雇用者/経営者 |
・Say on Pay(役員報酬に関する方針決定に株主が加わることを認めること) |
||
・生態系変化 |
・議長とECOの地位の分離 |
||
・環境リスクが言及されている施設 |
・社会的なリスク が言及されて いる地域 |
・その他 |
|
・その他 |
・その他 |
||
(CFA協会=米国版アナリスト協会=のESGマニュアルより) |
|||
| (2)開示要求の可能性のある定量情報 | |||
環境(E) |
社会(S) |
ガバナンス(G) |
長期継続性(V) |
【業界共通】 |
|||
エネルギー効率 温室効果ガス排出量 |
従業員の回転率 |
訴訟リスク 汚職 |
新商品からの収入 |
従業員研修と 資格 |
|||
従業員の 年齢構成 |
|||
欠勤率 |
|||
【特定の業種に適用】 |
|||
再生可能エネルギー の開発 NO、SO排出量 廃棄物 |
ESG基準による 投資 |
政治団体 への献金 |
R&D費用 顧客維持 顧客満足度 |
ESG基準による 供給契約 |
|||
商品の 安全衛生性 |
|||
リストラ関連の 配置転換 |
|||
(DVFA/EFFAS=各ドイツ、欧州版アナリスト協会=の 基本パフォーマンス指標より) |
|||
関連ニュース
- キッコーマン(2801) 東海東京調査センターで2→3。(8月12日 13:07)
- キッコーマン(2801) しょうゆの世界戦略を粛々と進める。(野村証券)(7月22日 13:11)
- T&Dホールディングス(8795)はメリルリンチの格上げを好感 「大同生命の契約業績に底打ち感、株価/EV倍率も割安」(6月22日 13:09)
- フジメディアホールディングス(4676) 2期連続の高い利益成長と予想。(シティグループ証券)(6月9日 9:16)
- フジ・メディア・ホールディングス(4676) 野村証券で2→1。テレビ広告の強さが再認識され始めている。(5月31日 9:10)
- T&Dホールディングス(8795)は5日ぶりに反発 今期経常利益計画のコンセンサス上振れを評価(5月20日 10:58)
- フジ・メディア・ホールディングス(4676)は3日ぶりに反発 費用管理強化と非放送事業底入れで前期利益予想を増額(5月11日 10:52)













