☆鈴木一之 マーケットレポート くぐり抜けた“魔物相場”(2018年11月07日)

中国景気は要警戒も
好決算 日本MDMなどに注目

株式アナリストの鈴木一之です。毎週木曜日にこのような形で紙面に掲載していただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

厳しい10月相場をどうにかくぐり抜けることができました。「秋は魔物が棲(す)む」と言われある程度の警戒心は持って臨んだはずですが、月間の下落率はリーマン・ショック以来の大きさに達したそうで、想像を超える激しい下落であったことを物語っています。

その点は信用取引の評価損率が急拡大していることからもうかがえます。今年2月から3月にかけて「VIXショック」に直面した際の信用評価損率は▼11.6%でした。それが今回は▼16%を超えています。ほとんどすべての投資家がかなりの損失から逃れることはできなかったことを示しています。

今回の株価急落の主因は米国の長期金利の上昇とされていますが、実は現時点ではよく分かっておりません。米国の金利上昇によって、新興国から資金が逃げ出す不安が起こりつつあることが大きな背景として横たわっています。
その悪材料に拍車をかけかねないタイミングで、サウジアラビアの著名ジャーナリストがイスタンブールで殺害されたこと、それによってサウジとトルコとの間に不穏な空気が醸成されていること、折しも原油価格の上昇が続いていたこと。

米国の中間選挙が終わるまでは買い方も本気では買い参戦できないこと、それらが重なってボラティリティが急上昇していること、などが下げ要因として挙げられます。

そのうちのどれかが的を射ているはずです。あるいは当たっているようですべてが外れているのかもしれません。私はこのほかの要因として、世界経済が下向きの動きを強めていることを挙げておきたいと思います。景気後退の矢面に立たされている筆頭格は、中国ではないでしょうか。

9月30(日)に公表された9月の製造業PMIが急低下したことが、マーケットではかなりの驚きをもって迎えられました。原油価格は10月3日にピークを付け下落に転じています。原油以上にロンドンの非鉄市況がこの付近から再び下落基調に入りました。

中国の景気動向に陰りが生じ始めると、少し遅れて主要先進国の景気が下り方向に向かいます。そこには若干のタイムラグが存在するように見てとれます。上向きに反転しつつあった海運市況も再び上値が重くなっているようです。米中貿易摩擦による貿易面への影響が実際の経済活動に現われている可能性があります。

株式市場は全体として、10月末までの急落局面をどうにかしのいで、今や失われた局面を徐々に挽回(ばんかい)する方向にあります。しかし楽観は禁物です。一人勝ちの米国経済はよいとして、米国以外の地域で明白な景況感の回復がないと相場は再びへこたれてしまいかねません。

頼みの綱の企業業績は、上出来の企業とそうでない企業がはっきりと分かれています。業績によって株価が支えられる銘柄は一部分にとどまることになりそうです。米国の中間選挙の結果も気になりますが、しばらくは行ったり来たりの状況が続くのだと思います。

その上で、決算内容のしっかりした銘柄、例えば日本エム・ディ・エム(7600)JBCCホールディングス(9889)エフアンドエム(4771・JQ)に注目しています。

鈴木一之(すずき・かずゆき)氏=千葉大学卒業後、大和證券入社。1987年に株式トレーディング室に配属。機関投資家向け証券営業に就く。一貫して株式トレードの最前線において相場と格闘し、その奥義を究める。2000年よりインフォストックスドットコムに場を移し、日本株チーフアナリストとして相場を景気循環論でとらえるシクリカル銘柄投資法を展開。日本証券アナリスト協会検定会員。 主な著書は『きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ』(2013年7月、日本経済新聞出版社)、『これならできる!有望株の選び方』(2014年1月、日本経済新聞出版社)、監訳『オニールの空売り練習帖』(以下、パンローリング)、 『DVD ウォーレン・バフェットの投資法』、『DVDブック 大化けする成長株を発掘する方法』など。東京マーケットワイドメインキャスターをはじめ、BSジャパン、ラジオ日経、日経マネー、マネージャパン、ネットマネーなどメディア出演多数。


[本紙11月8日付1面]

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