☆「生活者株主」が日本を救う! 特別インタビュー さわかみ投信 取締役会長 澤上篤人氏に聞く(2015年03月13日)

企業と個人投資家、強力タッグがじわり浸透中

長期投資のパイオニア「さわかみファンド」を立ち上げたさわかみ投信の澤上篤人取締役会長。現在は全国各地を回って「生活者株主」の普及に情熱を注いでおり、3月13・14日開催の「東証IRフェスタ2015」への登壇も予定されている(14日午後3時半―)。「生活者株主が日本株市場の主役となる」とのテーマで講演を行うとのことだが、果たして「生活者株主」とは何なのか。澤上会長に聞いた。

――講演テーマにも掲げた「生活者株主」とは何か。

さわかみ投信が提唱する新しい概念で「生活者が株主になること」だ。われわれ生活者は企業と“紙の表裏”のように切っても切れない関係にあり、生きていくためには企業が提供してくれる食料や衣服が必要。企業側もモノを購入してくれる生活者が存在するからこそ経営が成り立つ。ならばいっそ、生活者にとってなくては困る企業を応援する具体策として「株主になること」を個人に広く浸透させることで、企業の安定経営、ひいては日本経済の持続的な成長を実現する仕組み作りを目指す。

――株式市場は機関投資家のインパクトが強い。個人がこれに対抗できるのか。

生活者株主は理想論ではない。日本企業を長期にわたって応援するのはわれわれ生活者を置いてほかに存在せず、生活者株主の育成・拡充は不可欠だと考える。日本株の3割超を保有する外国人投資家の多くはヘッジファンドなど短期の利ザヤ稼ぎが目的で、残念ながら国内の機関投資家もこれに追随。資産の大部分をインデックス投資に振り向けており、個別企業には全く関心が向いていない。

そんな現実をようやく認識し始めた企業の一部が、生活者株主との接点を強く求めている。さわかみ投信が毎年9月に開催する運用報告会には投資先企業も参加。昨年は32社がブースを構えて、来場した1,500人のファンド仲間(投信保有者)に向けて事業内容と生活向上との関連性が語られた。

――企業側にも「生活者株主=運命共同体」との意識が広がっている?

ROE(自己資本利益率)や配当性向など目先の数字にとらわれず事業内容に聞き入るファンド仲間の姿に多くの企業が感銘を受けたようで、今年は参加企業が大幅に増えそうだ。ちなみに、さわかみファンドには現在約12万人のファンド仲間がおり、企業を支える「真の長期投資」を理解している。企業にとっては非常に頼もしい、株式市場における新勢力となる可能性を秘める。

――長期投資啓蒙の全国行脚、手応えは。

さわかみ投信の立ち上げとともに長らく啓蒙(けいもう)活動を続けてきたが、ここ1、2年ではうれしい変化が。学生など若者、女性といった従来投資家には珍しかった層のセミナー参加者が目立つ。

直観に優れた女性は理論を重んじる男性に比べて行動的だと感じる。某企業で行ったセミナーには従業員の男性よりも、その配偶者である女性の参加率が3割程度も高かった。家計を握って家族を“守る”といった日ごろの責任感から、株式投資が生活防衛に直結するという長期投資の基礎をスムーズに理解してもらえたようだ。

――学生の反応はどうか。

ここ2、3カ月のうちに1,000人程度の学生と対話したところ、大変ユニークな反応があった。不思議なことに、ボランティア活動など社会貢献に相当なエネルギーを注いでいる彼らでさえ、就職を機に“自覚なく”路線変更をしてしまう。大手企業に勤めて安定収入を得ることを目指すようになるのだ。社会貢献を目指すならば大手企業に就職先を限定する必要性はなく、むしろ、大手企業に対しては投資家になるほうが有意義であることを説いたところ、皆すんなり理解してくれた。例えば、大企業のベースアップは2%で年間8,000億円ほどが労働者に支払われている計算になるが、投資家に対しては配当や自社株買いなどの還元策に追加で2兆円を上乗せしている。

――最後に個人投資家に向けてメッセージを。

年金制度への不安が高まり、誰もが将来への備えの必要性を痛感している。投資未経験者にはまず経験することをお勧めする。さわかみファンドで成功体験を積み上げて正しい方向感を身に着けてほしい。利ザヤを稼ぐといった従来の「投機」を続ける人には、生活者株主への変身を目指してほしい。ただし、企業の応援は半端な気持ちでは成し遂げられない。さわかみファンドの運用報告会で企業と直接対話するなど「温度」を感じながら投資をしてほしい。(Y)

「さわかみファンド」概要:
さわかみ投信が運用、直接販売するファンド。1999年8月の設定以来、市場価値が割安と考えられる国内銘柄を選別投資し、割安が解消するまで持続保有するバイ・アンド・ホールド型の運用を一貫する。9日現在の純資産総額は3,197億1,900万円、基準価額は2万1,866円。口座数(直販分)は11万7,047。

[本紙3月16日付1面]

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