モノの輸出入の収支を表すのが「貿易収支」。旅行や運送などサービス取引の収支である「サービス収支」や、投資収益の結果を指す「所得収支」などと合わせ、モノやサービスの経常取引による収支を経常収支と言います。外国為替市場では、米国の経常収支の赤字問題が折に触れてドル売りの材料となっています。
経常赤字の大半は、貿易収支の赤字問題です。米国の貿易赤字が増加すると、貿易の相手国である日本や中国の貿易黒字が増加することになります。
これは、日本などで、輸出によって受け取るドルの量が、輸入でドルを支払う量より大きくなることです。外国為替市場でいうなら、ドル買い・円売りの量より、ドル売り・円買いの量が多くなることを示しています。
そのため、貿易赤字の増加は、ドル安・円高の材料になりやすくなります。毎月発表されている、米国の貿易赤字が拡大すると、ドル売りの材料にされるケースが多くなるのは、このような理由があります。
しかしドルが売られるのは、純粋な、貿易取引に伴う需給だけではありません。政治的な思惑が、前面に出てくることも要因です。
米国は、財政赤字と経常赤字の2つの赤字問題を抱えています。過去に米国の貿易赤字が多かったのは対日本で、しばしば貿易摩擦が問題となってきました。
米国の貿易赤字が膨らむ要因はいくつか考えられますが、相手側、つまり日本の円が不当に安いことを政治的に問題視されやすかったことが上げられます。対日貿易赤字額が拡大すると、米国から円高要求が高まるとの思惑から、円高が予想され、’95年には、1ドル79円にまで、円高が進んだこともありました。

近年、米国の対日貿易赤字額の拡大は一服しています。日本の2007年上期の対米貿易黒字額も7期ぶりに縮小しています。
一方で、米国の貿易赤字額は対中国が拡大しています。中国の対外貿易不均衡が懸念され、かつての日本と同じように、貿易摩擦が生じつつあります。
この原因の一つとして、割安な中国人民元が問題視されてきており、国際的に人民元相場の切り上げ、上昇を求める声が徐々に増えてきています。