公明、政府系ファンド公約に
7月28日に任期満了となる参院選。結果次第では株価にも大きな影響を与える。特に今回の参院選では衆議院で少数与党の自民、公明が過半数を維持できなければ政局が大荒れになるため、いつも以上に結果が注目されそう。自公は参院選に向けて市場に親和性が高い政策を打ち出しているが結果はどうなるか。
石破茂首相は9日、「2040年に平均所得5割増」を参院選の一番目の公約に掲げることを明らかにした。経済成長と賃上げを重視する姿勢で、消費の底上げが期待される。当面の物価高対策としては税収の上振れ分を活用した数万円程度の給付が議論されている。また、公明党は物価高対策の生活応援給付や所得控除のさらなる引き上げなどのほか、新たな財源を作り出すため、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの経験を生かして、国の資産を計画的に運用する日本版政府系ファンドの創設も公約に盛り込んだ。
一方、立憲民主党、日本維新の会、国民民主の野党3党は消費減税を公約に盛り込む見通し。消費減税が実現すれば、短期的には株高の可能性はあるものの、長期金利上昇の引き金になれば一転、株安の材料となってしまう。
公明が提唱する政府系ファンドについては米国のトランプ大統領も2月に設立を命令する大統領令に署名している。さらに、ソフトバンクG(9984・P)の孫正義会長兼社長が日米共同で政府系ファンドを創設する構想について、米ベッセント財務長官と話し合ったと、英フィナンシャル・タイムズが先月、報じた。日米関税交渉が進む中、米国との投資関係のひな形になる可能性があるとしている。実現すれば日米の株価へインパクトを与えることとなろう。
さて、今回の参院選では与党が63議席以上ならば改選過半数を獲得する大勝利、50~62議席なら非改選議席を含め過半数を維持、49議席以下なら過半数割れとなる。
三井住友DSアセットは6日付のレポートで、与党大勝利なら勢いに乗って衆院の解散総選挙に打って出ることも想定され、市場は好感する一方、過半数割れならばリスク・オフで反応するとの予測を示した。政局の不透明感が高まり、減税などを巡る野党の発言力が強まれば、財政悪化懸念で長期金利に上昇圧力がかかることも見込まれる。50~62議席の場合、現状の政局が続くため、選挙結果が直接市場に与える影響は限定的になると分析している。
参院選投票直前と年末の日経平均株価 | |||
投開票日直前 | 年末 | 騰落率(%) | |
2010 | 9585 | 10228 | 6.7 |
2013 | 14589 | 16291 | 11.7 |
2016 | 15106 | 19114 | 26.5 |
2019 | 21466 | 23656 | 10.2 |
2022 | 26517 | 26094 | -1.6 |
日経平均株価が算出開始した1950年以降、参院選後、年末までの騰落率は18勝7敗と勝率は7割を超える。直近5回では4勝1敗と勝率はさらに上がる。
2010年は民主党政権下で行われ、自民が圧勝したこともあり株価は年後半は堅調に推移。13、16年も安倍晋三政権下で与党が連勝して株価も上昇した。特に16年はトランプ米大統領初当選も好感され、選挙後は26.5%の株高になり、高度成長期の1965年に匹敵する結果となった。2019年は与党が議席数を減らしたものの過半数は維持したこともあり、市場への影響は大きくなかった。
前回の22年は、岸田文雄政権下で与党は勝利したものの、世界的なインフレ傾向や中国の新型コロナ再拡大などが景気の足を引っ張り、株価は下げている。つまり、参院選以外の外部環境の影響が大きかった。
今年も参院選以外にもトランプ政権の関税政策や物価高など不安定要因がある。参院選の結果と併せて、年後半の市場を占う材料にしたい。(HS)