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インタビュー2023年9月7日

ウェルスナビ・牛山史朗執行役員(上) 「長期・積立・分散」投資が基本

投資初心者へのアドバイス

老後2,000万円問題や年金不安が社会の関心を集める中、政府も資産所得倍増計画を掲げ、「貯蓄から投資」の動きを推進している。しかし、いざ投資を始めようとしても、何をすれば良いか分からなかったり、実際に始めても知識不足で不安になったりする人も多い。現役世代を中心に投資を考えている人や初心者向けへのアドバイスをロボットアドバイザー最大手・ウェルスナビ(7342・G)の牛山史朗執行役員に聞いた。

――なぜ今投資が必要なのか。

牛山氏 今の現役世代の状況は一昔前と変わってきていることを理解していただく必要がある。親世代は終身雇用が一般的で、自分の勤めている会社で真面目に働いていけばある程度退職金が見込め、年金も充実している。現役のうちに将来のお金を考えなくてよかった。今や退職金は年々減少し、年金も少子高齢化で従来のように手厚くもらえるか不安が出ている。老後の生活費は会社や国が準備してくれるものでなく、自分で準備しないといけない世の中に変わってきている。

最初に考えるのは預貯金だろうが、今はほとんど利息がつかない。投資はリスクがあるものの、何十年という長期では増える可能性が高く、老後に備えるために有効なツール。投資をする必要性がでてきた。

それからインフレ。世界的にみると一般的だが、これまで日本はなかなか物価が上がらない状況が続いてきた。これからは物価上昇の可能性がある。物の値段が上がった時、持っているお金が増えなければ、実質的に買う力が減ってしまうため、物価上昇についていく意味でも投資の必要性が高まっている。

――かつては預金金利が高かった。

牛山氏 金利が良かっただけでなく、バブル崩壊で株を買って損をしたという痛い経験をした人もいる。それがトラウマとなった親世代から投資なんかするものでない、堅実に預金をしていくべきといわれるかもしれない。まずは時代が変わったことを認識いただくことが一番。欧米と比べて、日本人の金融資産は預貯金に偏っている。政府はNISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇措置を作っており、個人が投資に踏み出しやすい環境を作ってくれている。時期的に投資を始めるなら今だと思う。

――初心者向けの投資というのはどのようなものか。

牛山氏 本来の投資と、投機とギャンブルとを区別する。“投資が怖い”というのは投機やギャンブルと混同している可能性がある。まず、個人のするべき投資はどういうものかイメージをしっかり持つことが大事。初心者も上級者も個人がやるべき投資はある程度変わらないと思っており、それが「長期・積立・分散」という投資の方法。1年で2倍にするといった急激な方法でなく、10年、20年、30年と言う長い時間をかけて、しっかりと将来に備えた資産を作っていくことが一番良い。

――「長期・積立・分散」投資のメリットは何か。

牛山氏 お金を増やす原動力は世界の経済活動。世界の経済は長い目で見るとしっかり成長しているので、日本だけでなく世界中に分散投資することが1つの基本になる。株だけでなく債券とか、ウェルスナビでは金や不動産もあるが、資産の種類も幅広く分散投資することが基本となる。2つ目に重要なのが長期投資。過去、暴落があっても人々の工夫で景気は上向きに戻り、長期的に世界経済は伸びている。成長するのに時間がかかるので長期投資が必要となる。また、相場の予測はプロでも難しい。高値掴みのリスクを抑え、安いところでたくさん買える効果を使うことが積立投資のメリット。「長期・積立・分散」の3つを組み合わせてやる必要がある。

牛山史朗氏 京都大学大学院で金融工学を専攻。三菱UFJ信託銀行、野村証券を経て2015年12月にウェルスナビ参画。アルゴリズム開発などを手掛けている。