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トップ記事2023年11月21日

オルタナティブ投資、世界的に急増 野村やSBI、個人向けに発表 金融庁も重視、日本でも存在感

三井住友DS 小林弘明氏

上場株式や債券以外の分野に投資するオルタナティブ投資が日本でも存在感を発揮し始めている。野村証券やSBIHD(8473・P)が富裕層向けを中心に個人投資家向けの戦略を相次いで発表。三井物産(8031・P)は子会社でデジタル証券を活用した「ALTERNA(オルタナ)」を今年スタートした。金融庁も「家計の資産形成を進めるうえで、運用対象の多様化が重要」と重視する姿勢を打ちだしている。

オルタナティブ投資に詳しい三井住友DSの小林弘明シニアインベストアドバイザー(写真)がこのほどメディア向けの勉強会を開き、そもそもどのような投資なのかや国内での見通しを解説したので紹介する。

小林氏によるとオルタナティブ投資の主なものは非上場株式(PE)、私募不動産、非上場インフラ、プライベート・デット(銀行以外の主体による企業への貸付)、ヘッジファンドが挙げられる。ヘッジファンドを除いては流動性が低い。分散投資効果や高いリターン、インフレヘッジなどの効果が見込まれる。

世界的にはリーマン・ショックを経て、2010年代に急増。10年に4兆ドル(600兆円)だった市場規模が昨年は15兆ドルと4倍近くに膨らんでいる。米国では年間収益1億ドル(約150億円)超の企業のうち、上場企業は15%未満。小林氏は「今や、PE投資をしなければ広範囲にわたる収益機会を得られなくなっている」ほど。

また、長期的に良好なパフォーマンスを挙げており、特にリーマン・ショックなど株式が暴落した際にも下落幅を抑えられるのが特徴。ITバブル崩壊時には不動産など一部アセットは逆に大幅なリターンを挙げている。このため長期投資に向いているという。

米国の大学基金では資産の58%をオルタナティブ投資に向けており、日本の大学ファンドや東京大学などの基金もオルタナティブ投資の拡大を検討しているとされる。国内の企業年金でも17%をオルタナティブ投資に配分している。

国内の個人投資家向けの動きについて小林氏は「富裕層には相当なニーズがあると考えている。一部証券会社がセパレートマネージメントアカウントという(顧客ごとの)個別ファンドを組成して、そこにPEを入れる動きが出ている。一般向けにもPEをわずかながら入れるファンドが出てきており、まだポピュラーではないが、これがどれだけ普及させられるかがポイント」と指摘。一般向けには不動産やインフラのようなインカムゲイン系のアセットが普及させやすいという。

ただ、投資にあたっては十分な説明が必要。そのため、初心者向きではない。「(投資するならば)まず上場株、債券で、それに飽きたらない人が増えてきた場合はオルタナティブ投資のスキームが今よりずっと増えるだろう」と予測した。

SBIHDの北尾吉孝代表取締役会長兼社長は「機関投資家は徹底的にオルタナティブに投資しており、我々は一般の投資家に供給していこうというのが基本的な考え方。1万円から購入できる商品を開発する」と意欲を示した。(HS)