AIけん引でロジック、メモリの拡大継続
9日の東京市場ではハイテク株を中心に主力銘柄が買われ、日経平均株価は続伸となった。前週末の米国で発表された5月の雇用統計は事前予想を上回る良好な内容だったうえ、トランプ大統領が中国との関税交渉について、主要閣僚が出席して9日にロンドンで行われるとの見通しをSNS(交流サイト)で発信、安心感が広がった。NYダウ、ナスダック総合指数、S&P500の主要株価指数が大幅反発し、9日は円安も進んだことから東京市場でも買いが先行した。
ハイテクセクターの中核となる半導体関連については、先週、WSTS(世界半導体市場統計)が堅調な市場見通し(販売額)を発表。こうした予測も支えとなっている。
世界の半導体市場予測 | |||
2024 | 2025 | 2026 | |
米国 | 45.2 | 18.0 | 9.6 |
欧州 | -8.1 | 3.4 | 6.1 |
日本 | 0.0 | 0.6 | 5.8 |
アジア | 16.4 | 9.8 | 8.5 |
※前年比(%) |
WSTSは世界の主要半導体メーカー50社で構成される業界団体。2025年の半導体市場は前年比11.2%増と2ケタの伸びをキープする見込み。24年の実績は19.7%増と2割近い伸びとなり、過去最高だった22年の実績を超えた。26年は8.5%の伸びを予想しており、3年連で過去最高を更新することになる。
25年のけん引役は引き続きAI。データセンター(DC)、AIサーバの投資拡大の恩恵が大きいGPU(画像処理半導体)などのロジックが23.9%増、HBM(高帯域メモリ)を中心とするメモリが11.7%増と伸びる。一方、パワー半導体などAI以外の分野は低調が継続する見込み。EV(電気自動車)の普及ペースが想定を下回っているほか、家電向けなども低調で、当面はAIの一本足打法が続きそうだ。関連する銘柄選びもこうした状況を踏まえて考えたい。リスクとしては関税問題や中国向けの輸出規制が想定され、いずれもトランプ政権の政策に左右されることから、一定の警戒感は残りそうだ。26年にはスマートフォンやパソコンなどの端末側で処理を行うエッジAIが本格普及に進むとみられ、フラッシュメモリを含めた、高速メモリへのニーズが拡大しそうだ。
GPU、HBM向けの製造装置ではアドバンテスト(6857・P)、ディスコ(6146・P)、KOKUSAI ELECTRIC(6525・P)、SCREENHD(7735・P)、TOWA(6315・P)、日本マイクロニクス(6871・P)などをマーク。パッケージや材料などでは東京応化工業(4186・P)、レゾナックHD(4004・P)、イビデン(4062・P)など。
パワー半導体には厳しい見通しが続くがローム(6963・P)はDC向けの省エネタイプの開発などに取り組んでいる。このほか、半導体メーカーではフラッシュメモリの世界的な大手であるキオクシア(285A・P)。同社はAIサーバ向け製品に力を入れているほか、エッジAIの普及ではフラッシュメモリの需要増加が見込まれる。(M)