トランプ政策が追い風
後場は一段高となったものの、前日の米国市場がメモリアルデーで休場だったこともあり、27日の東京市場は手掛かり材料に乏しく、日経平均株価軟調スタート。こうしたなか気を吐いたのが川崎重工業(7012・P)だ。前日比488円(5.1%)高の9,999円まで買われ、今年3月の年初来高値1万35円に迫った。
川重が代表を務め、大成建設(1801・P)、東亜建設工業(1885・P)との共同企業体が26日、日本水素エネルギー(JSE)の国際水素サプライチェーン(SC)の国内基地の建設に着工したと発表。この国内基地は、JSEが幹事会社として実施する「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の一環として建設される。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金を活用し、2030年度までに出荷と受け入れの両機能を含む国内基地、今後建造する液化水素運搬船を用いて、上流から下流まで国際水素サプライチェーンの性能、安全性、経済性など商用化に求められる要件を確認するという。液化水素貯蔵タンク、海上荷役設備、水素液化設備、水素送ガス設備、液化水素ローリー出荷設備を備えた、世界初の商用規模の施設になる。
脱炭素社会の実現に向けては再生エネの活用のほか、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素、アンモニア、二酸化炭素の排出が少ない天然ガスの活用が進められている。小型原子炉による新たな原子力発電も計画されている。新たな技術の開発と社会実装に向けていずれの分野でも中核的な存在となるのが、三菱重工業(7011・P)、IHI(7013・P)を含めた重工3社だ。三菱重工はLNG(液化天然ガス)を使ったGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)発電でトップを走るが、水素、アンモニア焚きによる発電を進めている。IHⅠもアンモニア製造などで注目される。
トランプ政権の政策も追い風だ。防衛力の強化のほか、関税を巡る日米交渉では米国の造船業の復活に向け日本が協力する方向となってきた。同じく、関税の交渉材料として米アラスカ州のLNG開発への協力が交渉材料として浮上している。トランプ大統領は日本や韓国などアジア勢のプロジェクト参加に期待を寄せている。開発には巨額費用が必要とされ、採算性などの観点から実現を疑問視する声もあるが、いずれの分野でも日本の重工3社の技術がカギを握ることになる。中期スタンスで押し目を狙っていきたい。(M)