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トップ記事2025年5月15日

止まらない「完全子会社化ラッシュ」 親子解消、アクティビスト… 背景を探る

調整ムードを強めた15日の市場で、親子上場解消などによる完全子会社化ラッシュの動きが話題を集めた。

親会社によるものは、50.1%保有する清水建設(1803・P)日本道路(1884・P)に対して2,520円で、69.3%保有のVTHD(7593・P)トラスト(3347・S)に対して410円で、それぞれTOB(株式公開買い付け)を実施。14日終値に対して40.8%のプレミアムが付いたトラストは当然のようにザラバ値付かずのままストップ高比例配分となった。

これに対し、日本道路は2%強の上げにとどまった。14日のTOB&決算発表は引けと同時だったが、同日午後1時から突然動意づいて、13.3%高で引けていたためだ。日本道路に対する清水建設のTOBと言えば、これで2回目。前回2022年3月(24.84%→50.10%)の際には、証券取引等監視委員会がインサイダー取引に関する課徴金納付命令の勧告を行った経緯もあり、情報管理面の問題を指摘する向きもあるようだ。

一方、もともと親子上場ではないが、大同工業(6373・S)は同業大手の椿本チエイン(6371・P)が株式交換方式で完全子会社化するもので、こちらもストップ高比例配分。大同工業1株に対して椿本チエイン0.65株を割り当てるため、14日終値時点では40.4%のプレミアムとなっていた。

もう1銘柄、三井住友建設(1821・P)は一時10.5%高。こちらも親子解消以外のTOBで、インフロニアHD(5076・P)が完全子会社化を目指すものだが、プレミアムがやや小さめ。収益が低迷する一方で、3月末から5月14日まで31.9%高となったためだろう。旧村上ファンド勢が4月15日報告時点で保有比率を27.80%まで高めていたことが最近の急伸の背景だ。

なお、旧村上ファンドは4月に、三井住友建設の子会社、三井住建道路(1776・S)も5.01%買い付けていた。当初はこちらの親子ペア解消を働きかけるとみられていたが、「買う側」のはずだった三井住友建設が「買われる側」に転じたことになる。

ちなみに、少し前に「NRIを買収か」と報じられたNTTデータがNTTに完全子会社化されることになり、アクティビストがアイチコーポレーション完全子会社化を求めていた豊田自動織機も「MBO(経営陣の参加する買収)による株式非公開化」の動きが表面化している。グローバルな大手企業を交え大胆な買収戦略発表が相次ぐなかで、買う側と買われる側の境界線が曖昧になってきたとも言えるだろう。

市場では次のTOB候補を探る動きも活発化してきており(最終面の「JACK流『勝利の方程式』参照)。15日付日本経済新聞でも「次はどこが動くのか。例えば、産業ガス最大手の日本酸素ホールディングス」などと報じている(親会社は三菱ケミカルグループ)。決算発表シーズンは15日で一巡するが、もともと横並び志向の強い日本企業だけに、一度動きだした流れは簡単には変えられないだろう。(K)

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