決算発表一巡とともに始まるのが“株主総会の季節”。例年、今頃の時期になると突飛高する銘柄なども生じてくる。
例えば前週末16日にプライム市場上昇率7位(18.1%高)となり、19日も2015年8月以来10年ぶりの高値まで買われたJフロントリテイリング(3086・P)。会社側が開示した株主総会資料の大株主3位「ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー505018」のカストディアン(資産管理銀行)口座が有力アクティビスト、3Dインベストメント・パートナーズのものではないかとの思惑がX(旧ツイッター)などを通じて広がったことが発端だ。確かに同じ名義は3Dの投資先である東邦HDなどにも見られる。
ただし、Jフロントは2月期決算で、総会は来週28日。総会資料も4月28日開示済みのものだった。これに対し、足元では既に3月期決算企業の総会資料開示が始まっており、今後も同様の例が生じる可能性は十分ありそう。昨年で言えば、5月23日寄り前の開示資料で大株主に「オアシス・ジャパン・ストラテジック・ファンド」の名義が浮上した帝人(3401・P)が当日、一時12.0%高に買われた経緯もある。
なお、決算短信の1ページ目には「株主総会開催予定日」や「有価証券報告書提出予定日」「配当支払開始予定日」といった有用な情報が記載されており、保有銘柄についてはここで確認したい。一方、「総会資料の電子提供開始予定日」は短信での記載がないが、東証サイト上の「上場会社情報」には5月9日現在の一覧表が掲載されている。主要企業ではNTTや第一生命HD、三井物産、三菱商事などが既に開示済みで、19日は東京エレクトロン、NTTデータなどの3社が予定される。今週中に155社、来週には800社近くに達するため1つ1つをチェックしてはいられないが、前記のような思惑浮上の可能性を秘めていることには留意したい。
株主提案の内容が総会招集通知によって明らかになるケースもある。といっても、近年では「書面受領のお知らせ」「取締役会意見に関するお知らせ」として事前に開示する例がほとんどとなり、直近1カ月では63社が株主提案に絡むリリースを発行している(うち2社は提案取り下げ)。
最近では三菱UFJFG(8306・P)による15日引け後のリリースがちょっとした話題を呼んだ。社名の「フィナンシャル・グループ」から「・」を外すことや、堀江貴文氏、立花孝志氏らを社外取締役とすることなどを求めた7議案にいずれも反対するとしたものだ。株主提案もいろいろだが、その昔の12年には野村HD(8604・P)に、「野菜HD」への社名変更やオフィス内の便器を全て和式とすることなどを求める100の提案が寄せられ、6月1日の総会招集通知開示で内容が明らかになると(招集通知には要件を満たす18議案のみ記載)、当時の市場の話題を席巻したものだ。なお、この材料でというわけではもちろんないが、野村HDは当日の1日と週明け4日で計6.5%安となった経緯がある。
こうした面白提案(?)はともかく、近年はアクティビストによるものでも真摯(しんし)な提案には賛成率が上昇する傾向が顕著で、株価材料として無視できなくなってきている。株主総会の招集通知や関連資料は情報の宝庫。これから始まる開示ラッシュにも目が離せない。(K)