米のイラン攻撃で日経平均続落
米国は22日、イランの核施設3カ所を爆撃した。米国がイラン本土を攻撃するのは初めて。イラン国会はホルムズ海峡封鎖を承認するなど、緊張が高まっている。地政学リスクの高まりから23日の日経平均株価は49円安の3万8354円と続落。三菱重工業(7011・P)などの防衛株や、石油価格高騰の懸念からINPEX(1605・P)などの資源株は逆行高となったものの、全般的にさえない動き。
しかし、東海東京インテリジェンス・ラボの長田清英・執行役員チーフストラテジストは前週末の20日に開いたメディア向け勉強会で「中東情勢や米国の関税政策がどうなるか分からないので夏場は米国株が小休止になる可能性が高い。しかし、米国が参戦すれば一瞬暴落するが、交戦が早く終わることもあり得る。関税がクリアになったところで年末に向けてしっかりとした動きになると思う」と、予想した。日本株も年後半は期待できそうだ。
関税政策については、相互関税の上乗せ分の停止の期限が7月9日だが、「今の状況では難しく、延期される可能性も多分にある」と分析する。さらに、自動車、半導体、医薬品など品目別の個別関税も言われており、詳細はこれから。不透明な状況はまだ続いている。
しかし、米国市場はトランプ政権がやや柔軟姿勢を示しただけで大きく反応。S&P500は4月安値からV字回復しており、史上最高値まであと一歩となっている。長田氏は「さすがに戻り過ぎという感じ。関税はトランプ政権の1丁目1番地の政策なので、なんとしてもなり遂げようとしていると考えた方が良い」という。
現時点では影響が出ていないインフレや雇用についても、不確実性は高い。FRB(米連邦準備制度理事会)は18日、利下げを全会一致で見送ったが、ドットチャートを見ると7人は年内の利下げ無し、8人は2回の利下げと見方が完全分かれている。長田氏は「どうしても米国離れ、米国売りが起きやすくなる。中東情勢もあり、夏場は小休止してもおかしくない」とみている。
ただし、S&P500は4月の下げでも弱気相場入りを回避しており、テクニカル的な節目を割り込まなかった。年末に関税交渉の行方が見えるほか、トランプ政権の掲げる減税や利下げを踏まえると、緩やかな上昇基調が見込めるという。
一方、欧州は再軍備計画で防衛費が拡大。さらにインフレを嫌ってきたドイツが防衛費に関して財政拡大ができる仕組みにしたこともあり、成長率が急速に加速することが見込まれる。24、25日にNATO(北大西洋条約機構)首脳会議が予定されているが、防衛費をGDP比率5%への引き上げが決まれば、足元、利益確定売りに押されていた欧州の防衛関連株がさらに勢いを増す可能性がある。
さらに、欧州の中ではスペインが人口を上回るインバウンド観光客の影響もあり、景気が絶好調。こうした要因もあり、欧州株は引き続き米国株を上回る好調さが続く可能性があるとしている。(HS)