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インタビュー2021年12月20日

「売上高3倍増」長期ビジョンの実現性は 新日本製薬 後藤孝洋社長に聞く

カギ握るデータベース活用

通販主体のオールインワンスキンケア化粧品最大手と言えば新日本製薬(4931)。11月の決算発表時には2030年の「売上高1,000億円(経常利益率15%)」を掲げた“長期ビジョン”を発表して注目を集めた。今9月期見通し(370億円)の3倍近い規模感となるためだ。ところが、高成長期待とは裏腹に、今月2日にかけて19日続落となるなど株価の反応は芳しくない。そもそも今期が上場来初の減益見通しにあることから、市場では懐疑的に受け止められた面もあるようだ。とはいえ、長期ビジョンの描く近未来像に現実味が増してくるようなら、安値圏の現在の株価もミスプライス是正に向かう可能性は十分ありそう。「売上高1,000億円」への道筋は描けるのか。それ以前に、今期減益見通しは“成長路線の曲がり角”ではないのか。同社の後藤孝洋社長(写真)に話を聞いた。

――そもそも「オールインワン化粧品」とは何か。

「美容部員が店頭で説明して販売する従来の『ライン型化粧品』は化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック、化粧下地などからなり、計1万~2万円を要する。これらが1つで済むのがオールインワン化粧品だ。当社の『パーフェクトワン』は4,000円程度が中心であり、手軽なうえに経済的だ」

――業界内での位置取りは。

「2006年に発売した当社は草分け的存在で、16年からオールインワンスキンケア国内売上トップをキープしている。直近のシェアは19%で、同時期に参入した2位の企業が10%程度だ。

――コロナ禍にも関わらず、前9月期まで連続増収や最高益を続けてきた。

「直営8店舗や4,000の取扱店舗の販売は苦戦したが、当社はテレビや新聞媒体を通じた通販が約9割のため、影響は軽微にとどまった。顧客の7割を60歳以上のシニア世代が占めており、定期購入によるストック収益型モデルで安定度が高い」

――ところが今期は、増収ながら減益転換予想。成長の曲がり角を迎えているのでは。

「全く逆だ。投資家に誤解されたのは納得感のある説明を十分にできていないためと反省している。通販では先行した広告投資が重要だが、ここ1年は投資対効果を見極めて投資を絞っていた。新規顧客獲得数も20年9月期の約40万人から前期は約32万人に減少したが、今期は大規模な広告投資再開で50万人への拡大を計画している」

――それはなぜか。

「大型商品化の期待される『クッションファンデーション』が好評で、新規顧客獲得が良好だからだ。昨年発売したシワ改善、美白効果の『薬用リンクルストレッチジェル』も高価格帯ながら高い伸びを続けている。9月からは20~30歳代を対象に新ブランド、『パーフェクトワンフォーカス』を立ち上げた。こちらはSNS(交流サイト)中心に展開していく」

――足元の好環境は理解したが、かねて掲げる25年9月期の売上高500億円はともかくとして、30年の1,000億円目標は少々過大なのではないか。

「現在のパーフェクトワン依存度は約9割。当然これだけでは届かず、新ブランド・新事業創出が重要になる。当社はもともと健康食品、医薬品なども手掛けるが、19年の株式上場に向けて、最も投資効果の大きい化粧品事業に経営資源をシフトさせてきた経緯がある」

「再び成長軌道にのせる際、カギを握るのがデータベースマーケティングだ。現在、約550万人のデータベース中、年間利用者約150万人だ。これが売上規模につながっている。化粧品だけでなく、健康食品、医薬品などヘルス&ビューティー分野全般にご利用いただければ、1,000億円は決して無理な線ではない」

――長期ビジョンの「事業展開イメージ」図にはヘアケア、ダイエット、予防医療、スポーツなど多彩な記載が見られる。

「それらはあくまでもイメージだが、『30億~50億円規模×10事業』の創出が課題となる」

「たとえば、実店舗をオープンするには通常、6カ月程度の準備期間を要するが、通販なら、その気になれば1週間でも対応可能だ。どの媒体で、どの時間帯に、どのような広告を出せば効果的かなどについては20数年間培ったノウハウがあり、スピード感をもって展開したい」