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トップ記事2025年9月16日

「新潟県上場企業IRフォーラム」17日開催 新潟銘柄 超割安返上の機「新潟県上場企業の会」会長 ハードオフコーポレーション 山本善政会長に聞く

2年越しで話題を呼んでいるのが“令和の米騒動”。最近スーパーなどの店頭に新米が並び始めたが、依然高騰は収まらず再び関心を集めつつある。そして、米の産出額で「45年連続全国トップ」と言えば新潟県だ。新潟本社で、「サトウのごはん」で知られるサトウ食品(2923・S)は四半期決算発表を受けて11日にストップ高。8月末から28.3%高まで買われた。「優良企業ぞろいながら地味で割安」とされてきた新潟企業。実際、表①の通り、多くの企業が極端な低PBR評価に甘んじてきたわけだが、キッカケ一つで大きく変わるポテンシャルの大きさを示した例とも言えるのではないか。そのサトウ食品も含め多数の企業が参加する「新潟県上場企業IRフォーラム2025」が17日に開催される。今年で7回目となるが、昨年開催日(9月18日)から前週末12日終値までに5割を超えて上昇したものが6銘柄に及び(表②参照、同期間の日経平均は23.0%高)、今年も急伸銘柄発掘の場となる可能性を秘める。「新潟県上場企業の会」会長であり、フォーラムの旗振り役を務めるハードオフコーポレーション(2674・P)の山本善政会長(写真)に話を聞いた。

①新潟県の東証上場企業
銘柄 コード 市場 PBR 事業内容
ユキグニファクトリー 1375 P 3.4倍 キノコ生産販売
第一建設工業 1799 S 0.8倍 線路工事
田辺工業 1828 S 1.0倍 プラント建設
植木組 1867 S 0.5倍 建設
福田組 1899 P 0.6倍 新潟首位ゼネコン
ブルボン 2208 S 1.0倍 食品
亀田製菓 2220 P 1.2倍 食品
岩塚製菓 2221 S 0.5倍 食品
ハードオフ 2674 P 2.1倍 小売り
セイヒョー 2872 S 2.0倍 アイスOEM
一正蒲鉾 2904 S 0.9倍 水産練り製品大手
サトウ食品 2923 S 2.0倍 包装米飯最大手
オーシャン 3096 S 1.2倍 食品スーパー
北越コーポ 3865 P 0.6倍 製紙
フラー 387A G 3.8倍 デジタルパートナー事業
キタック 4707 S 0.6倍 建設コンサル
有沢製作所 5208 P 1.1倍 プリント基板
北越メタル 5446 S 0.2倍 電炉メーカー
コロナ 5909 S 0.3倍 石油ストーブ
ダイニチ工業 5951 S 0.5倍 石油ファンヒーター
AIRMAN 6364 P 1.3倍 建設用コンプレッサー
ツインバード 6897 S 0.5倍 家電
スプリックス 7030 S 2.4倍 学習塾
日本精機 7287 S 0.4倍 二輪計器世界一
第四北越FG 7327 P 0.7倍 銀行
トップカルチャー 7640 S 蔦屋書店展開
遠藤製作所 7841 S 0.5倍 ゴルフクラブOEM
コメリ 8218 P 0.6倍 ホームセンター
アクシアル 8255 P 1.2倍 スーパー
大光銀行 8537 S 0.2倍 銀行
新潟交通 9017 S 0.4倍 バス
リンコー 9355 S 0.2倍 港湾運送
BSNメディアHD 9408 S 0.5倍 TBS系放送局
北陸ガス 9537 S 0.3倍 地方ガス大手
アークランズ 9842 P 0.9倍 ホームセンター
②昨年のフォーラム開催日(9/18)からの上昇率上位
スプリックス 7030 △71.2%
第四北越FG 7327 △70.1%
田辺工業 1828 △54.7%
第一建設工業 1799 △54.2%
日本精機 7287 △53.2%
植木組 1867 △51.8%
(12日現在)

――新潟県上場企業は割安株ぞろいではあるが、逆に言えば、なぜこれほど市場評価が低いのだろう。

「確かにPBR0.5倍にも満たない銘柄が少なくない。客観的に見ても、高い技術を持って真面目に取り組んでいる企業ばかりだが、新潟県人気質として宣伝下手なことも背景なのではないか。それでも最近は、社長自らテレビCMに出てアピールしているAIRMAN(旧北越工業)のような例も出てきている」

――格好の「アピールの場」となるIRフォーラムは、どの程度の来場者を見込んでいるのか。

「例年受付を通さずに入場される方が多いため公式統計はないが、昨年は推計で過去最大の3,000人近く。今年はさらに膨らむ見通しだ」

――今年さらなる増加を想定する根拠は何か。

「学生の増加に期待している。大学横断組織『次世代BASE』で活動されている方々がインフルエンサーとして呼びかけを行っているためだ」

――確か、その話は昨年も聞いたような…。

「昨年は急に決まったため、既に夏休みに入っていた学生の参加は数十人にとどまった。次世代ベースのトップ3人の顔触れは同じであり、昨年の経緯を踏まえ、今年は春先から動いてくれている。彼らの発信力を考えれば、一気に数百人となる可能性も十分ある。そうなれば、中高年齢層の個人投資家が中心を成す会場のムードも変わってくるのではないか」

――そもそも一般学生にIRフォーラム参加のメリットはあるのか?

「もちろん『学生は将来の投資家』という側面だけではない。新潟県内の大学は短大含め30もあって相当な数の学生が通うが、多くは卒業とともに県外に就職していく。こうした状況には花角英世知事も心を痛めていた。しかし、それは県内に上場企業が39社(うち東京プロマーケット4社)もあることが学生に知られていないためだ。彼らは地元優良企業の存在を知らず、人手不足に悩む企業側も有望な地元人材を逃すミスマッチで、双方に“機会損失”が生じていた。参加が上場企業に限られるIRフォーラムの会場で各社と膝詰めで話ができることは、学生にとっても大きな魅力となるのではないか」

――花角知事は地元スタートアップ企業育成にも力を注いでいるとか。

「県内にスタートアップ支援拠点が7つできた。そのうちの1つが、弊社の本社がある新発田市の『ハードオフ・スタートアップ・シバタ』だ」

――将来的な株式上場につながりそうな有望企業は育っているのか。

「まだその段階にはなく、そう簡単にはいくまいが、お互いに刺激し合ってやっているようだ」

――新潟県初の東証グロース市場銘柄として7月24日新規上場のフラーは公開価格比4.4倍のロケットスタートだ。

「同社は昨年7月に『上場予定日前日の上場延期』となって、1年間回り道してきたが、電通グループとの資本提携やガバナンス改善なども進み、かえって良かったのではないか。また、昨年MBO(経営陣の参加する企業買収)で上場廃止されたスノーピークあたりにもいずれ再上場がありそうだし、今後も新潟県上場企業の順調な増加に期待したい」

――新興企業ではないが…。新潟と言えば米どころ、酒どころ。日本酒の蔵元あたりにも上場候補があっていいのかも。

「実は、様々な挑戦を続けながら伸びているある蔵元に『上場』を勧めてみたが、『うちは醸造しているからいい』と断られてしまった(笑)」

――最後に昨今の話題として、新潟県にとって米価高騰はどうなのか?

「米菓など加工食品を手掛ける上場企業にはコスト高要因となるし、例えば蔵元にとっても、農家が酒米から主食米にシフトするのは困る。だから一概には言えないが、県全体で見た場合、やはりやる気のある農家に追い風となる価格上昇は絶対プラスだと思う」

「地方創生」実現の一助に 東京証券取引所 岩永守幸社長

東証として、本フォーラムの目的に大いに賛同し、2019年から参加を継続している。日本の重要なテーマの一つである「地方創生」の実現に向けては、そこに根差す企業・従業員が豊かに成長することがカギになる。折しも、「地方創生2.0」が閣議決定された翌月、新潟県として初めて東証グロース市場への上場企業が誕生した。今後も、上場企業のさらなる企業価値向上や地域におけるスタートアップ・経営人材の成長を支援する取り組みを推進していきたい。(K)