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インタビュー2023年9月14日

ウェルスナビ・牛山史朗執行役員(下) 長期投資には新NISA活用

恐怖心解消のために正しいイメージを

投資に踏み出せない人や初心者はどのように投資へ向き合えばいいのか。ロボットアドバイザー最大手・ウェルスナビ(7342・G)の牛山史朗執行役員に話を聞く後編。ベテラン投資家の参考になる話も多い。

――「長期・積立・分散」投資ならば投資への恐怖心を解消できるのか。

牛山氏 “投資が怖い”背景として、ハイリスクハイリターンのイメージや、そもそも投資がよく分からないことがある。「長期・積立・分散」投資の考え方や、どのように資産が増えていくかのイメージを正しく持ってもらうことで、“怖さ”はかなり払拭できると思う。ウェルスナビは最初に5つの質問に答えていただくと、その方のリスク許容度を診断して、資産の組み合わせを提案する。その際、リーマン・ショックが起こった場合にどのくらい減るかと、長期で運用した場合にどの程度の確率でどのくらい増えるかのイメージを両方見てもらうことで、不安を持たずに投資を始めていただく。

――リスク許容度とは。

牛山氏 資産運用はどうしてもリターンに目が行きがちだが、まず見るべきなのはリスク。自分がどのくらいリスクを取れるかに合わせて、資産を配分する。資産運用の結果は資産配分によって左右される。どの会社を買うかということよりも、株にするか債券にするか、株でもどの地域に投資するかという大きな選択肢がある。大きく何にどのくらい投資するかが成果の大きなウエイトになることは研究でも明らかになっている。

――長期投資では一定のリバランスが必要と言われるが。

牛山氏 長期で分散投資を続けていると、最初に緻密に決めた資産配分のバランスが崩れる。例えば株価が上がると株の割合が増え、思っていたよりリスクが大きくなる。最適なバランスに戻すため、増え過ぎた資産を売って、減り過ぎた資産を買う形でバランスを戻すのがリバランス。長い期間やるとどうして歪みが出るので、それを直すのは長期の資産運用において重要。また、割高なものを売って割安なものを買うという効果もあり、リバランスによって、パフォーマンスが向上するとの研究もある。

――NISAは利用したほうがいいのか。

牛山氏 投資で利益が出た場合、約20%を税金として徴収される。長期投資で利益が大きくなるほど、利益の2割は大きくなるので、投資で得た利益が非課税となるNISAはぜひ活用したほうがいい。来年からは制度が恒久化され、金額も生涯で1,800万円と大きくなった。一般の人が老後資金にするには十分な金額だと思う。iDeCo(個人型確定拠出年金)も税制で優遇されているが、原則、退職時期まで出せない。NISAはいつでも引き出せる。いざという時の備えや不確実な将来への安心感という意味では、NISAの方が使いやすいと感じる方も多いのでは。

――ロボアドのメリットは。

牛山氏 日本で投資がなかなか進まなかった一因は、「投資は自分で全部やるもの」という考え。学校で投資を習う機会は少なく、周囲とも話しにくい。いきなり投資をしましょうといっても何をしていいか分からない人が多い。ただ、資産運用の必要性が高まっており、特に来年からの新しいNISAで投資を始めようという方も増えるだろう。ロボアドバイザーを含めた、金融機関にお任せで資産運用できるサービスは一つの有力な選択肢になる。当社の手本は富裕層向けのプライベートバンクだが、手数料が高い。われわれはテクノロジーの力を使い、少額から1%という低手数料で日本中にサービスを提供している。これまで運用サービスは商品を買っていただいたらそれで終わりだったが、われわれのサービスの目的はしっかり資産を増やしていただくこと。始めるときの相場状況はある程度、運のようなところがあるが、長く続けることでプラスが増えていく。5年以上継続されている方の9割近くが20%以上のプラスとなっている。

牛山史朗氏 京都大学大学院で金融工学を専攻。三菱UFJ信託銀行、野村証券を経て2015年12月にウェルスナビ参画。アルゴリズム開発などを手掛けている。