TOP  NSJアップデート  インタビュー  <特別対談> 日総工産 清水竜一代表取締役社長×経済アナリスト馬渕磨理子氏 ~後編~
インタビュー2021年6月24日

<特別対談> 日総工産 清水竜一代表取締役社長×経済アナリスト馬渕磨理子氏 ~後編~

新中計の数値目標は“保守的”

HRなど「種まき」着々進行中

日総工産(6569)の清水竜一代表取締役社長と経済アナリストの馬渕磨理子氏による対談を前編(6月18日付掲載)に続いて紹介する。後編では清水社長が新中期経営計画(以下、新中計)に込めた思いや新規事業の詳細が語られた。

――新中計のミッション「働く機会と希望を創出する」とは?
当社はこれまで、仕事を通して働き手のスキルを上げ、結果として長期勤務することにインセンティブが働くような仕組み作りに向き合ってきた。しかし、これからの“働く”は給料を得るだけでなく、将来に希望を持つ、幸福感を味わう、といったことが重視されてくるのではないか。こうしたウェルビーイング(肉体的、精神的、社会的にすべてが満たされた状態)の観点からも、新規事業ではHR(ヒューマンリソース、人事)テックに加えて、ヘルステック領域にも挑戦していく。例えば就業者の体質や健康状態に応じた食事やサプリメントのアドバイスなど。人材サービス業界の中で、ここまで踏み込むところはほかにない。

――このミッションを基に様々な挑戦が始まっている。例えば今年1月に発表したクロスリンク社との取り組み。
特に複数社の外部労働力を活用している大手メーカーは就業・勤怠管理などの仕様が派遣会社ごとに異なるため、事務処理が膨大だ。加えて、昨年4月に施行された派遣法改正による「同一労働同一賃金」導入に伴い、人材の適正な評価まで求められるようになった。クロスリンク社の取り組みは、これらの仕様を一元化し、かつ、すべてのデータを「見える化」することで、人材を管理する企業側、就業者側の双方の効率化を可能にした。

――シニア人材の活用も行っているようだ。
合弁会社を作り、ニコンで経験を積んできたシニア人材に同グループ内で活躍してもらっている。労働人口が減少する中で、ボリュームゾーンのシニア人材を上手く活用することが、当社の成長に直結すると考えている。次のステップではカメラやセンサーの需要が拡大している自動車業界などニコングループ以外での活用も検討しており、現在プロトタイプを開発中。

――HRテックについてはどうか。
働き手の募集から能力開発、より適性の高い仕事とのマッチング、そして定着支援。当社が手掛ける“入り口から出口まで”のプロセスの中に新しいテクノロジーを投入していくが、将来的にはこの仕組みそのものの外販を想定している。

強みの自社サイトも強化する。当社は自社で運用する採用サイトの集客力が強く、今期はこちらのプロモーションに3億円程度を投じて、下期以降はクライアントからのオーダーが拡大しても採用コストを月1億円強程度に抑える、といったことを計画している。この環境が整えば、データベースの活用や新たなパートナーシップの構築によってマッチングの幅をさらに広げることも可能に。

――最後に新中計達成への思いを聞かせてほしい。
よく「チャレンジング」「野心的だ」と指摘されるが、私が描いていることを3年間でやりきれれば、計画をはるかに超える数字が作れるはずだ。個人的には「控えめな数字を出させていただいた」という気持ちであり、最低限の必達目標として進めていく。

対談の様子は動画でもご視聴いただけます。
https://www.nsjournal.jp/nsj_library/nisso-6569/