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インタビュー2021年3月24日

トップインタビュー オンコリスバイオファーマ 代表取締役社長 浦田泰生氏 コロナ飲み薬で「マスクのない世界」を

治療薬開発が進展

「ワクチン効果による経済正常化」シナリオが“暗転”。独仏の都市封鎖再来など変異ウイルスへの懸念が広がるなか、にわかに脚光を浴びているのがオンコリスバイオファーマ(4588・東マ)だ。8日に「新型コロナウイルス感染症治療薬の開発化合物の絞り込み」、23日にも「新型コロナウイルス感染症治療薬 OBP―2011の変異型コロナウイルスへの効果に関するお知らせ」を発表して逆行高をたどる同社の浦田泰生社長(写真)に、コロナ禍の現状や今回開発した化合物(治療薬)の役割、今後の展望について聞いた。

――日本企業はコロナ治療薬、ワクチンともに遅れを取ってしまった。

「もともと2000年頃までは感染症治療に強い国だったのだが…。有力な抗生物質が開発されたことで感度が鈍り、多くは糖尿病治療薬など、使用頻度が高く『儲かる領域』に力を注ぐようになった。ここ20年ほどで生じた、SARSなど3度のコロナウイルスによる感染症パンデミックの研究を進めてきた海外大手が今回のコロナ禍でもいち早く対応できた」

――今回発表の化合物(OBP―2011)は、昨年6月に鹿児島大学から特許譲渡を受けて新型コロナウイルス感染症治療薬の開発着手を発表した「OBP―2001」とどこが違うのか。

「鹿児島大学とは10年以上共同研究を続け、多くの有望な化合物が生み出されたが、新型コロナに対しては全くの未知数。ダメもとでスクリーニングを行ったところ治療薬候補化合物群が発見された。その中の一つが『2001』。そして、さらに探索を進め、水溶性が高く飲み薬としても使用可能な候補を見出したのが、今回の『2011』だ」

――どんな効果か。

「分かりやすく言うと、ウイルスに感染した細胞は48時間程度で死滅するが、この化合物を加えておけば生き残る。また、10時間以上経過した後に化合物を加えてもウイルス抑制効果で細胞が生き残ることが分かった。この点が既存薬の『レムデシビル』と異なると考えられ、現在、メカニズムの解明を鹿児島大学と進めているところだ」

「分子量が大きければ、点滴で投与せざるを得ないが、飲み薬の道が開けたことによる意味も非常に大きい」

――注目度が高そう。

「昨年12月にはNHKの取材を受け、鹿児島大学にも何度も足を運んでもらった。当初、日本製ワクチンの話と我々の治療薬の“二本立て”特集の予定だったが、NHK側の理由で急遽企画が変更。治療薬の部分が大幅にカットされたことは少々残念だった」

――開発状況や今後の予定などを聞きたい。

「ブラジル型、ロンドン型などの変異株も入手できた。間もなくハムスターを使った本格的な動物実験に入る。22日に発表したように治験薬原薬の製造を岩城製薬に委託することも決めており、来年の早い段階で臨床試験を開始したい。大手企業への導出が決まれば、23年の製造販売承認も夢ではない」

――大手メーカーの反応などはどうだろうか。

「残念ながら国内各社の反応は今一つだが、むしろ海外大手の関心が総じて高い。たとえば外資系最大手の一角などは『いい結果が出たらいつでも連絡して欲しい』としていた。自社のワクチンとの相乗効果なども視野に入れているのではないか」

――とはいえ、ワクチン普及で感染が収束すれば“お役御免”では…。

「2、3年後に『普通の風邪』に近くなるとしても、高齢者などの重症化リスクが大きいことに変わりはない。変異によってワクチンの効かない耐性ウイルスも生じよう。そんな時にも、家庭内で手軽に『飲み薬でウイルス治療』ができてこそ、“マスクのない日常”を取り戻すことができる。インフルエンザ治療薬市場は日本だけで年500億円規模。一定以上の規模で備蓄が行われよう」

――これとは別に「すい臓がん薬を22年にも治験へ」とも15日の日本経済新聞で報じられた。

「こちらはウイルスの力でがん細胞を退治する薬だ。正常な細胞には作用しない。中外製薬に導出済みの『OBP―301』の効能をさらに大幅に高めた『OBP―702』のこと。体力の弱った高齢者にも使ってもらえる。当社では、他社の手掛けないこうした“尖った研究開発”に積極的に取り組んでいる」

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