M&Aてこに構造変革を推進中
生活に必須の『食』の領域で生産者と消費者をつなぐインテグレーションを手掛けるハークスレイ(7561・S)。開幕から2カ月を迎えた大阪・関西万博で提供する「BENTO」が大きな反響を呼ぶなど、若者世代に向けて『食』の情報発信を強化している。M&Aや異業種との提携により、持ち帰り弁当の事業からの構造変革も推進中だ。今後の取り組みについて青木達也代表取締役会長兼社長(写真)に話を聞いた。
――万博に出展している狙いと現在までの手応えは?
「夢洲駅『東ゲート』からすぐのパビリオンにブースを開設し、片手で食べられる『ワンハンドBENTO』を提供している。たこ焼きでもお好み焼きでもおいしい食べ物の記憶は大人になっても残るので、小中学生を中心に若い世代にアピールするのが狙い。定番である『のり弁』のほかにいくつかラインアップがあり、新たになにわ黒牛を素材として使ったメニューも開発できた。開幕当初は1日当たり700人程度だったお客さんも現在1,000人程度まで増えている」
――異業種との提携をはじめ、新規の需要開拓にも意欲的だ。
「今年4月に貸会議室大手のティーケーピー(TKP)様と業務提携した。コロナが明けて全国の会議室やパーティー会場がにぎわいを取り戻す中、弊社子会社の味工房スイセンに出資していただき、共同でTKP様のお客様に弁当を提供していく。今後はオペレーションの効率化をはじめ、両社で新商品の開発・仕入れを手掛けることでコスト削減が図れる」
「また、当社グループ会社の商品で谷貝食品が開発した片手で手軽に食べられ栄養補給できるナッツとドライフルーツを組み合わせた商品を、大手アウトドア専門店で販売しているほか、食物繊維やビタミンEなど様々な栄養素をバランスよく摂取できる稲葉ピーナツのナッツ類を、大手300円ショップで扱っていただいている。今後は結婚式場での冷凍洋食の提供も手掛けてみたい。ニッチであっても新たなマーケットを開拓している」
――4カ年の中期経営計画の1年が経過した、進捗のほどは?
「今次中計では食品の加工・製造の領域でM&Aによる構造変革を目指すと掲げた。前期は中華惣菜を手掛けるホソヤコーポレーションが子会社に入られ、M&Aを推進していくことの蓋然(がいぜん)性が高まった。紹介案件も確実に増えており、現在は複数案件を同時進行で検討している。ご縁があれば全てまとめたい。200億~300億円規模の食品メーカーが加わってくると、売上高1,000億円(2026年3月期計画は527億円)は難しくない」
「地方銀行など地域金融機関とのパイプも強化している。農産物の産地には食品の加工会社が数多くあるが、コロナ禍で苦労されているところが多いと聞く。野菜を調達してわれわれが加工・販売することで新たな付加価値を生む。豊かな地域資源を活用した6次産業の持つポテンシャルは非常に大きく地域金融機関と協調して取り組んでいきたい」
――26年3月期の業績予想は保守的ではないか?
「コメ価格の想定外の急騰が前期の利益を圧迫した。ただし、今年は主産地の北海道をはじめ作付けが増えており、政治的な側面もあってコメ価格は下がるとみている。それから、不動産市場の先行きを見通せないため、店舗アセット&ソリューション事業では私募リート販売による売り上げと利益を予想値に入れなかった。保守的に予算を見積もっており、不動産関連がオンされると上振れ余地がある」
――最後に個人投資家へのメッセージをお願いします。
「配当は余裕を持ちながら累進的に続ける。年あたり2円の増配は継続可能だ。それから、PBRを1倍に乗せるのはマストだと強く意識している。そのためにも、安定的な売り上げと利益といった業績面の数字をお示ししていきたい」(NA)