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インタビュー2021年6月25日

トップインタビュー 中原証券 小原一紀社長に聞く 「あくまでも日本株」の背景

ネット証券にない“強み”とは

中原証券 小原一紀社長

昨今の米国で“ロビンフッダー現象”が注目を集めるように、個人投資家の株式回帰は世界的な流れだ。東京市場でも1~5月の個人は現物・信用合算で買い越しに転じたが、年間買い越しとなれば7年ぶり(直近20年で4度目)のことだ。バブル崩壊後、長らく続いた“冬の時代”も含め、創業来の87年間を一貫して個人投資家と向き合い、あくまでも日本株中心に取り組んできたのが中原証券だ。ちょうど27日で就任2周年を迎える小原一紀社長(写真)に、「日本株へのこだわり」などについて話を聞いた。

――日本株の魅力は何か。

「情報誌や新聞、インターネットなどで手軽に入手できる多様な情報をもとに納得して投資判断ができ、リアルタイムで売買できることだ」

――日本株のほかに、外国株や投信、外債、仕組み債なども扱っているのか。

「国内上場株以外では、お客様からの要望で20銘柄程度の投資信託を取り扱っているぐらいだ。他にも要望があれば検討するが、外貨建て商品やお客様が理解しづらいような商品は扱わないように心掛けている」

――今春、日経平均の「30年半ぶり3万円乗せ」が話題を呼んだ。逆に言えば30年も抜けなかったわけで、日本株だけでは“開店休業”状態の時期もあったのではないか。

「アベノミクス相場入りで上昇基調に入るまでは大変だったが、それでもお客様に無理をさせるようなことのないように努め、その分、社員には我慢をしてもらうことになった」

――日本株をどのように顧客に勧めているのか。

「当社で『参考銘柄』を掲げるようなことはせず、あくまでも個々の営業員が本当にいいと思うものをお客様の投資スタイルに合わせて推奨している。営業員それぞれで注目する業種や銘柄が異なり、最近のトヨタのような主要銘柄での値幅取りに強みを発揮する者もいれば、新規上場株で、いったん人気が落ち着いたところを狙うといった手法を得意とする者もいる」

――バブル後は「株を知らない証券マンばかり」などと言われたりもしたが、御社は相場巧者揃いと見える。

「同業他社には、株の売買を厳しく制限するところも少なくないようだが、当社の社員にはルールに則った売買をむしろ勧めている」

――「ルール」とは?

「10営業日以内に反対売買をしないことと、立会中に発注しないこと。もちろん、お客様に先んじて注文を出す『フロントランニング』などが厳禁であることは言うまでもない。ただ、ある程度自分自身で経験していないと有望銘柄の発掘などは難しいのではないか。当社には、(『業務として』ではなく)強い興味を持って日本株と向き合っている者が多い」

――その辺はネット証券との差別化を図るうえでの大きな強みとなりそうだ。

「今や現物株でも一部手数料ゼロとするところが出てきた。お客様に『価値』を感じて頂けなければ、私どものサービスに手数料を頂戴することはできない。当社のお客様には、親から子、さらに次の世代といったように長い付き合いで信頼を頂いている方も多く、より真摯に、誠実に対応していくことが第一だ」

――間もなく社長就任2年となるが、この間の自己評価をどう考えているか。

「まだまだ評価すべきところはない」

――ご謙遜を。昨春来、長く続くコロナ禍で思うに任せない部分も大きかったのではないか。

「業界の付き合いなどもそうだが、営業店の現場を見て回ることができなくなったのが何よりも痛い。社内交流も大きく制限されている。最近『コロナうつ』といった言葉を耳にするが、特に若手社員が心配だ。当社は『人間性の尊重』を企業理念としている。お客様はもちろんだが、社員や家族についても人としての尊厳を大切に考えている」

――最後に小原社長ご自身の相場観を聞きたい。

「この先、ワクチン普及に伴うコロナ沈静化が見通せるなか、各国中銀は当面の緩和姿勢継続を掲げている。基本的には強気だが、金融政策については、ハシゴを外される懸念を抱えながらの“ビクビクした強気”だ。まあ、そうした状況の方が相場は長持ちするのかも知れないが…」