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インタビュー2025年6月25日

トップインタビュー NEW ART HOLDINGS 代表取締役会長兼社長 白石幸生氏 飛躍、世界トップのダイヤモンド・ブランドへ

目指すは300年続くコングロマリット

日本最大級のブライダルジュエリー専門店「銀座ダイヤモンドシライシ」と「エクセルコダイヤモンド」が、世界の「NEW ART」へ。NEW ART HOLDINGS(7638・S)は日本企業で初めてダイヤモンド原石の調達領域に参入。「自社一貫体制」を強化し、米国などアジア以外での販売も視野に入れる。

――ドバイに調達の拠点を設けた。

いまや世界で取引されるダイヤモンド原石の9割はドバイで取引されている。そしてその4~5割はロシア産だ。かつて流通の大部分が英国デビアス社の統治下にあった時代、原石はテルアビブ(イスラエル)やアントワープ(ベルギー)に集められていた。しかし世界の分断が進む中、新たに主導権を握ったインドやロシアは取引の中心地をドバイ(UAE)に変えた。

当社もドバイに拠点を設けることで、さらに良質なダイヤモンドを価格面でも有利に調達できる仕組みを整えた。ちなみにダイヤモンド原石の直接買い付けは日本企業では初めて。大手商社も参入したことのない領域だ。

――ビジネスの潮流がめまぐるしく変わる、今だからこそのチャンスをつかんだ。

「果報は寝て待て」という言葉がある。しかし戦争が各地で同時発生するなど変化がめまぐるしい現代においては、常に万全の備えをもってチャンスを待つべきだろう。そして目線は外へ。国内でじっとしているだけでは良案は浮かばない。

――まさに経営者の手腕が問われる時代だ。

当社はジュエリー事業において販売店を国内のほか香港と台湾で展開する。アート事業においてはシンガポールにアジア最大級のギャラリーと美術館を持つ。世界、特にアジアにしっかりと軸足を置いて事業を展開している。

国内ブライダルジュエリー業界において当社はダントツのトップ企業に成長した。競合はプライシングなどで当社を後追いするしかない。加えて当社はダイヤモンド原石の調達に新規参入し、さらには加工の拠点をインドに設けることで、ダイヤモンドの取扱量など事業規模を拡大させる。これまで培った国外店舗の横展開はもちろんだが、今後は小売・卸売の両面で、米国などパートナー経由での販売も視野に入れている。

――リゾート開発など新規事業の企画・開発も順調だ。

旧軽井沢エリアで計画中の高級レジデンス「K Forest」がいよいよ着工に入る。設計は世界的建築家の隈研吾氏。販売総額100億円以上と当社業績への貢献もさることながら、ミュージアムを2012年に開業した軽井沢の地域活性化に貢献できることを、なによりうれしく思う。

第2、第3のレジデンス、その先にはコンドミニアム型ホテルも想定している。アートとホテルを融合させた「ホテル&ミュージアム」構想を、将来的には既にギャラリーと美術館を置くシンガポールで展開するのも悪くない。

――ホテルは多額の資金が必要だ。ノウハウもない。

これまでご縁のあった企業などと「成功企業パートナー連合」を立ち上げる。例えば冠婚葬祭の費用など積立金を運用する互助会とは、彼らが所有するホテルと当社ジュエリー部門とでブライダル客を相互に案内するなど、シナジーが既に発揮されている。

私自身が美術品を売り買いしている関係上、国内外の経営者など成功者といわれる多くの方々とお付き合いがある。彼らは分身ともいえる会社を未来永劫にわたって発展させるために心を砕いており、そんな彼らを支援するのが「成功企業パートナー連合」だ。旧財閥のようなコングロマリット。「買収」ではなく「パートナー」として結びつくことで、当社自身も300年続く企業体になることを目指す。

――最後に業績について。

2025年3月期は売上高で前期比31%増、営業利益で同35.8%増と大きく伸ばし、創業来の最高額を達成した。しかし期初に掲げた計画値を下回ったことで、株主様にはご心配をかけてしまったかもしれない。

今26年3月期については売上高で300億円(前期比8.5%増)、営業利益42億円(同8%増)を計画している。前期までのように「目標」ではなく必達、意識的に抑えめの数字を公表することとした。

株主還元については今後も手厚く対応する。前期は創業30周年を記念して特別無償割当を実施した。すべての株主様に1株につき0.1株を割り当てることで、期末配当10円と合わせると180円程度と、実質24年3月期の期末配当である1株につき100円以上の価値を提供した。今期以降も無償割当や自己株買い付けなど何らかの施策は行うつもりだ。