「インフラは次の嵐に耐えられるか?」と題してレポート
資産運用の対象としてインフラ資産が注目を集める中で、世界有数のインフラ運用会社であるIFMインベスターズのインフラストラクチャー運用部門のポートフォリオマネジメント担当者は、「インフラは次の嵐に耐えられるか?」と題するリポートをこのほどまとめた。
重要なポイントは以下の通り。
・インフラは、過去の景気減速期にレジリエンスを発揮し、低成長・高インフレ期には伝統的な資産をアウトパフォームする可能性がある。
・同社は独自の投資リスク管理およびポートフォリオ構築ツールを活用して、ファンド資産のそれぞれの収益源がGDPに連動するリスクにどう影響を受けやすいのかを分析し、エクスポージャーを分散している。
・公益事業などのインフラのサブセクターはディフェンシブな特性を持つことは十分に理解されているが、有料道路、港湾および空港などの他のサブセクターは投資家にとって重要なダウンサイドプロテクションとより強固で長期的なリスク調整後リターンを提供する可能性がある。
同リポートによると、世界貿易の大変動、高止まりする市場のボラティリティおよび景気後退リスクなどの背景を受けて、株式と債券という伝統的な分散特性は厳しい状況に置かれている。不確実性が漂う環境では、マクロのエクスポージャーに左右されずにリスク調整後リターンを生み出せる資産を追求するという見解は、説得力があると指摘している。安定的で信頼できるキャッシュフローと低ボラティリティは、インフラ投資の特徴と言え、インフラの持つ回復力(レジリエンス)は多様な経済状況で発揮され、非上場インフラ株式は、2010~25年3月の間に年率リターンが平均12.5%に達し、ボラティリティはわずか2.9%にとどまった。インフラは、経済成長が低迷する環境下で底堅いパフォーマンスを示し、インフレからのプロテクションの仕組みが組み込まれていることから、重要なポートフォリオ分散の特性を示す可能性がある、と指摘している。「スタグフレーション」的な環境下では、これまでインフラは伝統的な資産クラスを大きくアウトパフォームしてきた、と説明している。
こうしたレジリエンスは、インフラの持つ基本的な特性である社会に不可欠なサービスを提供する有形資産であり、一般的には景気サイクル全般を通じて需要が安定的であることを反映している。このような資産を多数建設・運営するためのコストの高さと複雑さは、高い参入障壁と市場地位の確保を反映しているとされ、これが長期的なリターンの基盤となっている。
さらに、インフラからの収入はインフレ連動の場合が多く、この資産クラスは一種のインフレ・ヘッジとしての役割を果たすという。こうした連動性は(CPIとの連動、もしくは公益事業会社の規制下にある実質リターンとして)通行料や使用料を通じて明示的に示される場合もあれば、(強力な市場ポジションによって支えられた長期契約を通じて)コスト増加を顧客に転嫁する能力として示される場合もある。
ポートフォリオレベルでは、同社独自ツールであるInFRAMEを使用して、成長率、インフレ率または気候リスクなどの様々な要因に対する各資産のエクスポージャーを分別の上、セクター、地域、収益源でのリスク分散を目指している。このフレームワークの一環として、世界的なハードランディングなどリスク・イベントの影響もモデル化する。セクターや収入タイプごとの結果の多様性が、長期的により強固なリスク調整後リターンの基盤となる。
インフラ資産は、景気減速の影響から逃れられるわけではないが、性質上、そのサービスが必須であることから、市場で安定した地位を確立し、需要も安定しているため、多くは通常のビジネスよりも保護されており、顧客のポートフォリオに重要な分散投資のメリットをもたらすことができるとしている。入念に資産を選別して、エクスポージャーを分散し、リスクをモデル化することで、同社は、インフラ・ポートフォリオ全体への影響を最小限に抑えることを目指している。加えて、同社のファンドでGDPの影響をより受けやすい資産の多くは、景気拡大期に投資家のポートフォリオに利益をもたらす一方で、経済成長の鈍化と高インフレ両方の影響からポートフォリオを保護するためのプロテクションとなる。
※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。
