インフラへの資産配分は今後5年間で20%増加の見込み
不確実な時代、投資家の有効なリスク管理戦略の位置付け
年金基金が所有するグローバルなプライベートマーケット運用会社であるIFMインベスターズはこのほど、世界の大手機関投資家を対象としたプライベートマーケット投資への見通しに関する年次調査レポート「プライベートマーケット700(Private Markets 700)」2025年度版を発表した。同調査によると、インフラ投資は、不確実な時代において、投資家のリスク管理の主要戦略として台頭してきており、今後5年間で資産配分が20%増加する見込みと予想されている。
IFMインベスターズが毎年実施するPM700では、世界中の700名を超えるシニアの投資プロフェッショナルからの回答を分析し、最新のプライベートマーケット投資の動向を明らかにするとともに、北米、アジア太平洋、欧州に関してそれぞれの地域に特化したインサイトを提供している。
今年の調査では、インフラ資産への配分を行う投資家の割合が、地政学的リスクやマクロ経済の不安定性に対抗する手段として、世界的に49%から2030年には60%へと増加する見込みであることが判明した。
リターンに加え、リスク管理がインフラ投資を含むプライベートマーケット戦略に対する需要を高める主な要因となっており、投資家のほぼ半数(47%)が、分散効果、インフレヘッジ、レジリエンスをプライベートマーケットへの配分の主な理由として挙げている。また、同調査では、大半の機関投資家が地政学およびマクロ経済を資産配分に影響を及ぼす主な要因としており、それがプライベートマーケットへの資産配分シフトを促進していることも明らかになったと指摘している。
プライベート・エクイティとインフラストラクチャーのリターンの差が縮小
インフラ投資への資産配分の増加傾向は、過去12~18カ月間でインフラ・エクイティおよびデット投資が「期待リターンを満たすパフォーマンスを上げた」または「期待リターンを上回った」という投資家の報告と一致。過半数(57%)がインフラ・エクイティのリターンが予想を上回ったと回答し、デット投資についても49%が同様の結果が報告されている。インフラ・エクイティの期待ネットリターンは現在13.4%で、24年から200ベーシスポイント上昇し、プライベート・エクイティ(13.65%)とほぼ同水準に。インフラ・デットの期待リターンは9.6%で、24年から170ベーシスポイント上昇している。
同調査レポートでは、従来のコア戦略の人気は依然として高い一方で、投資家がリスク・リターン曲線上でより高い位置を目指している点にも焦点を当てている。以下の通り。
・投資家の7割(71%)がプライベート・エクイティとインフラストラクチャーの両分野にまたがる投資機会を求めている。
・ほぼ半数(46%)がバリューアッド戦略を有効とみている。
・3分の2以上(67%)がインフラ投資のミッドマーケットを魅力的な分野と考えている。
政策的サポートの必要性
投資家は、投資可能なプロジェクトの供給の増加を後押しする規制や政策措置を求めている。インフラ投資の主な障壁として、資産配分の制約と、案件供給が需要に追い付いていないことが挙げられた。回答者の6割は、よりリスク・リターンの高い投資案件が、インフラ分野への民間資本の流入を促進するとみている。
IFMインベスターズの最高戦略責任者のルバ・ニクリナ氏のコメント。
「地政学的ショックやマクロ経済の不確実性に対する懸念が、機関投資家に投資戦略の見直しとオルタナティブ資産への投資の検討を促しています。市場が混乱する局面では、パブリック資産の価格はボラティリティが増し相関性が高まり、従来の分散効果が機能しなくなるため、より効果的なリスク管理と成長性を求めてプライベートマーケットへのシフトが進んでいます」
「インフラ投資は、株式と同等のリターンを低いボラティリティで実現できる可能性がある資産クラスとして評価されており、不確実性の時代にこそ真価を発揮する、耐性の強い資産クラスと言えます」
「エネルギー、交通・輸送、デジタルコネクティビティといった世界の主要なニーズに対応するだけでなく、インフラ投資のリターン期待値がエクイティとデットの双方で大幅に上昇しており、これらの資産クラスからより大きなアルファが生み出されると予想されています」
「投資家のインフラへの関心は高まっていますが、案件供給の加速が不可欠です。規制改革による計画承認の迅速化、国を跨がる越境フレームワークの透明性の確保、政府支援による収益メカニズムの整備の全てが重要な施策となります。規制による後押しがあれば、インフラ資産クラスは投資を呼び込み、成長する可能性があると当社は確信しています」
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