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インタビュー2025年5月29日

リーダーズダイアログ ~IPO社長に経営者目線でインタビュー~ IACEトラベル 西澤重治社長

JIA 白岩直人社長が聞く

「Smart BTM」の成長に自信

IPO(新規上場)社長とジャパンインベストメントアドバイザー・白岩直人社長によるトップ対談。第四回目の対談相手は、4月7日に東証スタンダードに新規上場したIACEトラベル(343A)の西澤重治代表取締役社長執行役員。同社は企業の業務渡航を包括的にマネジメントするBTMサービスをはじめ、顧客企業の個人旅行手配や福利厚生サービス、米軍・官庁に特化した専門サービスなどを展開している。

白岩 マーケットが混乱する大変な環境下でのIPOだった。株価について所感を聞かせてほしい。

西澤 あの状況下で当社に期待を寄せていただいた株主さまには感謝しかない。しっかりと結果を出し、さらなる成長を見せることで期待に報いていきたい。これまでも市場や景気が良くない時こそ引き合いを多く伸ばしてきた。初値についても、「ピンチはチャンス」という私たちの考えを発信する機会になったと前向きに捉えている。

白岩 これまでも様々な逆境を乗り越えてきた。

西澤 コロナ前にある程度上場審査を進めていたが、もうすぐというところで中断せざるを得なかった。しかし、コロナ後の世界では出張の在り方が変わると確信していたことから、本来は上場後に計画していたシステム開発をコロナ禍でも続け、2021年10月にクラウド出張手配システム「Smart BTM」をリリースした。自身のポリシーである盤石な財務基盤が整っていたからこそ、コロナ禍でこの構想を継続する決断ができた。

白岩 上場の目的、調達資金の使用使途は。

西澤 私たちはBtoB(企業間取引)のビジネスモデルなので、上場による信用度の向上は新規顧客、特に大企業の獲得において重要なポイントの一つとなる。実際、上場承認が公になった際は多くの引き合いがあった。Smart BTMはまだまだ開発余力がある。今後は新規商材の拡充やバックヤードの効率化に約6億円を投じる。また、Smart BTMは少しでも使っていただければその良さを分かってもらえる自信がある。広告宣伝費として2億円程、さらにセールス強化のための人件費として2億円弱の成長投資を計画している。

白岩 BTMサービス自体は色々な会社が手掛けている。

西澤 まず大手系列との競合に関しては、コストパフォーマンスの高さを訴求していく。このように混乱した状況下では企業の経費削減需要が高まる。また、企業内で手配会社を抱えるインハウスではシステム投資に積極的ではない場合もあると聞いている。航空券価格はリアルタイムで変動するので、旧来のメールや電話のやり取りでは安値のタイミングを逃してしまうことがあり手間もかかる。この点私たちの利便性は優位だ。ほかに海外OTA(ネット旅行会社)なども競合として考えられるが、ここに対しては人的サービスが差別化ポイント。優秀なオペレーターの育成は一朝一夕にできるものではない。

白岩 今後システムを外販する予定はあるか。

西澤 どこでマネタイズするかはこれから考えるが、戦略の一つとして可能性は十分ある。例えば社内で手配を行っている中堅規模の会社への外販、あるいはこれまでも顧客企業先に当社の社員を駐在させて、その会社の手配を全部やってもらうといったケースが実際にある。

白岩 地政学リスクの高まりなど、昨今の外部環境が出張市場に与える影響は。

西澤 ポストコロナでは、通常の観光旅行に比べて出張需要は戻りが早かった。また、私たちのサービスにはビザ申請代行も含まれている。コロナ禍で中国政府が短期滞在ビザの免除を停止していた際には、あらためてBTMサービスの存在価値が見直された。その時は私たちでも受けきれないぐらいの需要があり、ここでかなりの新規企業を獲得した。まさに「ピンチはチャンス」を体現した出来事だったと思う。

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西澤重治氏プロフィール
1987年にIACEトラベル入社。要職を歴任し創業者との信頼関係を構築。2000年に創業者より代表取締役を引き継ぎ、「中興の祖」として今日に至る。

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白岩直人氏プロフィール
三和銀行(現、三菱UFJ銀行)を経て、45歳でジャパンインベストメントアドバイザーを創業し8年でマザーズ市場(当時)への上場を実現。金融商品の組成・販売などを中心に、主に金融ソリューション事業を展開し、日本全国に数千社の顧客基盤を有する。新規事業にも積極的に取り組み、2015年に日本証券新聞社を子会社化。

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≪取材後記≫
コロナ禍は旅行業界に未曽有の危機をもたらし、先行きの不透明感が漂っていました。そのような状況下、出張形態の変化をいち早く見抜き、「Smart BTM」を前倒開発し、現在の圧倒的な競争優位性を確立された西澤社長のご決断には、深く敬服いたします。まさに、ピンチをチャンスに変えてきた西澤社長率いる同社の飛躍に期待したいと思います。

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