JIA 白岩直人社長が聞く
ECサイトの海外販売をタグ1行で実現
新進気鋭のIPO(新規上場)社長とジャパンインベストメントアドバイザー・白岩直人社長によるトップ対談。今回のお相手は、3月31日に東証グロースに新規上場したジグザグ(340A)の仲里一義代表取締役。同社は「タグ1行で世界中のカスタマーとEC(電子商取引)サイトを気持ちよくつなぐ」を掲げ、外国人消費者が日本のECを利用する支援をしている。
白岩 「タグ1行でつなぐ」ということを説明してほしい。
仲里 今、リアルでは多くの外国人が日本に訪れているのと同様に日本のECサイトにも外国人が訪れ、2~4%、多いところは10%以上の海外アクセスが存在する。これをウェブインバウンドと呼んでいる。しかし、言語、決済、物流の壁があるため、日本のECは海外販売ができていない。日本のEC市場規模からすると4000億円~8000億円の購入できていない体験があると推計している。私たちはこの壁を取り払って海外カスタマーが安心・安全・簡単に欲しい商品を購入できるサポートをしている。そこで(ECサイト側に)タグ1行を入れると多言語ナビゲーションが外国人カスタマーの画面に現れるソリューションを作り出した。海外からクリックすると英、中、韓国語に対応したナビゲーション画面で簡単に注文ができ、われわれがその購入を代行する。ショップからすると国内注文がジグザグから入ることになり、われわれが海外に発送する。私自身、海外ECで買えなくて苦労した体験があったため、簡単にできるようにしたかった。
白岩 ウェブインバウンドが多い国内ECサイトはどのようなものか。
仲里 どんな小さなECにも存在している。アニメ、ホビー、趣味嗜好(しこう)品のショップは、規模は小さいが海外ユーザーが結構いる。一方、大手のサイトは、海外売上比率は少ないがサイトそのものが大きいため1%でも結構な数になる。生鮮食品などは送れないが、そういったもの以外は全部対象となっており、約1000サイトで実際に海外売り上げが上がっている。カテゴリーは日本のECの比率がそのまま反映され、アパレルが最も多くて、次いでトイ・ホビーといったところ。大手アパレルから酒蔵といった地域に根差したECサイトまで幅広く利用されている。
白岩 大手は自社で海外対応しないのか。
仲里 まさにそこがポイント。カナ入力フォームを無くしたり、国ごとの住所入力フォームの対応、海外配送料の細かな設定をしたり、不正決済のリスクを負ったりと手間がかかる。われわれは全部データを持っており、簡単に対応できる。ショップ側は初期費用3万円と月額5000円(税別)だけで済み、売り上げ手数料も海外送料もかからない。各種海外決済対応や多言語サポート、海外配送まで一気通貫対応。タグの設置は5分ぐらいでできる。ショップ側のハードルを下げたのがわれわれの戦略。
白岩 海外に拠点を作って、逆のことをしないのか。
仲里 今は日本を拠点として「Fromジャパン」でやっているが、同じプロダクトを海外に持っていくことも計画している。Fromアメリカ、Fromアジアといったように。各国にも同じようにウェブインバウンドが存在しているので、ニーズは高い。
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仲里一義氏プロフィール
オックスプランニング(現 株式会社クラウドポイント)およびオプト(現 株式会社デジタルホールディングス)でマーケティングの要職を歴任し、2015年6月にジグザグを設立、代表取締役に就任。
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白岩直人氏プロフィール
三和銀行(現、三菱UFJ銀行)を経て、45歳でジャパンインベストメントアドバイザーを創業し8年でマザーズ市場(当時)への上場を実現。金融商品の組成・販売などを中心に、主に金融ソリューション事業を展開し、日本全国に数千社の顧客基盤を有する。新規事業にも積極的に取り組み、2015年に日本証券新聞社を子会社化。
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≪取材後記≫
仲里社長の熱意と、ニッチながらもグローバルな視点を持つジグザグのビジネスモデルに感銘を受けました。既存のECサイトに一行のタグを追加するだけで海外展開を可能にするという手軽さは、多くの日本企業にとって魅力的なソリューションとなるでしょう。利用者にとっては、ロジスティクス、通関などの手間がいらないものの、輸出売り上げ、収益増に簡単につながるというよく考えられたビジネススキームです。着実に業容を拡大されるなぁと大いに感心しました。上場を機に、グローバル展開を目指す同社の今後のさらなる飛躍に期待したいと思います。