IPO(新規上場)社長とジャパンインベストメントアドバイザー・白岩直人社長によるトップ対談。第6回目の対談相手は、4月25日に札証アンビシャスに新規上場したエレベーターコミュニケーションズ(353A)の薄田章博代表取締役社長。同社はエレベーターの保守・保全などを行う独立系メンテナンス専業会社で、全国47支店を展開している。

白岩 初値は2,000円と公開価格(1,700円)を大きく上回り、市場の期待の高さがうかがわれる船出だった。

薄田 上場している同業はジャパンエレベーターサービスHDのみであり、同社の株価を見てわれわれに期待されていることが多いのだろう。お客さまからは「上場企業になったのでやっと取引できるようになった 」とオファーを頂くこともあった。営業活動における上場効果はある程度期待していたものの、お客さまの方から来ることに関しては想定外だったため、その点は驚いた。

白岩 エレベーターの保守点検市場はプレーヤーが多い?すみ分けはできているのか。

薄田 独立系は300社程、メーカー系も40～50社程ある。一言でエレベーターと言っても、5大メーカーが手掛ける乗用以外に倉庫などの貨物専用、飲食店で見かける小荷物昇降機など様々な種類があり、そこはメーカーとしてもすみ分けができている。われわれが扱えるのは分速150メートル、停止階数で15階建てぐらいまでがお客さまとなり得る。

白岩 支店は各都道府県にあり全国をカバーしているというイメージか。

薄田 まだ進出していない地域が10カ所以上ある。もともと東日本から始めていることもあり関東エリアには強い。一方、昨年大阪に支店を開設したがその周りはほとんどない。関西エリアはこれから力を入れていく。

白岩 トラブル対応の早さが特徴のひとつだ。

薄田 緊急時の対応は恐らくわれわれが一番早い。遠隔監視システム「イージスモード」とQRコードを活用した復旧要請システム「Qサポ」によって、現場の技術員にリアルタイムで物件情報が共有され迅速な復旧対応が可能。また、要請者は技術員のおおよその到着時刻を把握することができ、安心感につながる。

白岩 例えば大規模災害が発生したら多くのエレベーターが動かなくなる。それに対応するだけのリソースはあるのか。業務効率が悪いのでは。

薄田 1人当たりの持ち台数というものがある。業界的には120～150が一般的だが、当社はこれを最大80にしているので、持ち台数が少ない分巡回が早い。平常時は毎回の点検時間をしっかり確保できるので、故障率が低く二次的コストが掛からないという利点もある。故障率は通常の独立系で10%、メーカーでも4%と言われている中、当社は2%台となっている。

白岩 ゆくゆくは市場変更を考えているか。

薄田 次に視野に入れているのは福証Qボードだ。最初の市場に札証を選んだのも、地方に力を入れていることをアピールしたかったため。恐らく地方市場全てに上場している会社はないのではないか。東証は最後に目指す市場となるだろう。地方ではいまだ大手メーカーによる寡占状態が続いており、高額な料金がまかり通っている。われわれはこれを都市部と同じ適正価格で提供し、閉鎖的な市場に風穴を開けたいと思っている。