JIA 白岩直人社長が聞く
健康診断の一括サポートで成長続く
IPO(新規上場)社長とジャパンインベストメントアドバイザー・白岩直人社長によるトップ対談。今回の対談相手は6月23日上場のウェルネス・コミュニケーションズ(366A・G)の松田泰秀代表取締役社長。同社は大手企業や健康保険組合向けに健康診断の実施からデータ管理まで一括でサポートする。伊藤忠商事の社内ベンチャーとして創業。現在はSOMPOHDが筆頭株主。健診ソリューション事業で健康診断管理プラットフォーム「i-Wellness」で、企業、健康保険組合などの健康診断の課題を解決。健康管理クラウド事業はSaaS型の「Growbase」を提供する。
白岩 IPOの率直な感想を。
松田 高い評価をいただき、感謝の一言に尽きる。あらためて気を引き締め直して、しっかりとこれからの成長を実現していこうという覚悟を新たにしている。もともと2022年6月に上場を承認されたが、当時はロシアのウクライナ侵攻があった年で、残念ながら取り下げた。今回も上場前日に米国のイラン攻撃もあり、どうなるかと思ったのでほっとした。
白岩 設立の経緯は。
松田 創業は06年だが、その3年前に伊藤忠の社内プロジェクトとして、健康管理システムを企画、開発、流通したのがきっかけ。検診結果は紙で出ており、医療機関ごとに基準値がバラバラだった。ならばそこでデータをしっかり構造化できる機能が必要だと、全国の医療機関と提携して、しっかりと使える状態にした。入社後最初のうちに担当したのが医療保険の担当であり、企業の健康管理をデジタル化し、パーソナライズしたらいろいろなことが容易にできるのではないかと考えていた。その後、伊藤忠の米国駐在などを経て、16年に代表に就任した。
白岩 御社の強みは。
松田 2つの事業にそれぞれ競合がいるが、われわれの強みは両方の事業を持っていること。例えば、システムベンダーではきれいなデータが入ってこない、福利厚生の会社では検診や健康管理についての専門性を持っていないことがある。当社は専門性の高いオペレーションをしていて、各医療機関によって違うデータ表示を同一の判定に置き換えることができる。
白岩 内製や外注、営業はどうしているか。
松田 コア、ノンコアというか、差別化しにくい、技術上のハードルがそれほど高くない領域は、外注化や派遣社員で対応してる。逆に参入障壁を形成できるような領域は内製化している。それにより、少ない人数でオペレーションを回せ、営業効率、利益率を高められる。社内でロボット開発ができるくらい、継続的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していることも特徴。また、SOMPOグループは220万社の法人顧客との接点を持っており、営業面で活用している。SOMPOHDなどのパートナーチャネルからの紹介やリファーラル営業が多い。
白岩 成長戦略はどのように考えるか。
松田 成長は今の延長線上だと思う。さらに、中小企業の顧客も伸びている。中小企業には健康専任の担当者がいなく、システムを遠隔でお手伝いさせていただく。まさにこれから市場を作っていくフェイズ。健康管理、健康経営だけでなく、福利厚生や事業承継といったサービスとの組み合わせでアプローチしていく。
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松田泰秀氏プロフィール
1998年に伊藤忠入社後、2006年に社内ベンチャーとして立ち上がった同社に取締役として出向。その後国内外の伊藤忠グループ会社への出向を経て、12年に同社取締役に復帰し、16年より同社代表取締役社長を務める。
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白岩直人氏プロフィール
三和銀行(現、三菱UFJ銀行)を経て、45歳でジャパンインベストメントアドバイザーを創業し8年でマザーズ市場(当時)への上場を実現。金融商品の組成・販売などを中心に、主に金融ソリューション事業を展開し、日本全国に数千社の顧客基盤を有する。新規事業にも積極的に取り組み、2015年に日本証券新聞社を子会社化。
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≪取材後記≫
ウェルネス・コミュニケーションズは、健診データを高精度で統一し一元化する独自技術と、SaaS型健康管理クラウド「Growbase」を組み合わせ、競合企業にはない唯一無二のサービスを展開しています。また、大企業を中心に3,500社以上との取引実績を誇るなど、安定的な収益基盤を確立しています。今後は、健康管理業務のDX化が途上である中堅・中小企業向けに「Growbase」の利用促進を図りつつ、メンタルヘルスや組織分析といった周辺機能の拡充やAIによるデータ利活用を進めるなど、新たな価値創出や事業ポートフォリオの拡大に意欲を示されています。また、松田社長は、大手商社における様々な国内外事業にて長く鍛えられ、ビジネス・情報システムにも造詣が深いと思慮します。健康経営を推進する同社の持続的成長に期待します。