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銘柄・相場情報2022年6月9日

企業研究 霞ヶ関キャピタル(3498・東証グロース) 「地方創生」の救世主となるか?

三井物産子会社と「デジタル証券」参入

霞ヶ関キャピタル(3498・P)に注目したい。足元の株価は2,000円台を回復、4月6日に付けた年初来高値2,899円が意識され始めたタイミングにある。きっかけの一つは「新規事業」。物流施設をはじめとする不動産の開発・販売・運営を手掛ける同社は5月31日、個人投資家向けデジタル証券に参入することを発表している。

デジタル証券とは、いわゆるブロックチェーン技術を使って電子的に発行された有価証券のこと。三井物産(8031・P)の子会社と共同して、機関投資家など、これまで限られた投資家だけがアクセスできていた不動産投資ファンドを個人投資家にも提供することを目指す。

ただし、不動産を裏付けとするデジタル証券については、SBIなど証券会社も既に参入を発表しており、正直「目新しさ」は、ない。注目するべきは「その先」だ。同社が見据える近未来については、河本幸士郎代表取締役社長が4月22日に開催された個人投資家向け会社説明会で語った内容が参考になるだろう。

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当社は今年の1月からレジデンスファンドの運営に参画しました。レジデンスファンドは既に世の中たくさんあります。私募ファンドもJ-REIT(不動産投信)もありますから、仕組みそのものは「何ら目新しくない」と思われるかもしれません(図1)。

当社のレジデンスファンドは「目的」が全く違うところにあります。まずは、三井物産デジタル・アセットマネジメントという会社と一緒に、一般的なビジネスモデルとして立ち上げましたが、「デジタル」という社名の通り、近い将来、このファンドに入っている物件をデジタル証券に仕立てて、かつ、小口化した投資商品を作りたいと考えています(図2)。

目的は地方創生です。例えばJ-REITに入っている物件は、ほとんどが東京のものです。大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台、広島などもありますが、やはり東京の物件が中心です。ここに、私は違和感を感じています。
J-REITは確かに優れた不動産の小口の投資商品ではありますが、限界があります。大都市圏の物件しか実質的には買えません。理由はいろいろあるんですけれども、やはり、ネックは投資サイズです。

「デジタル証券」参入、その目的は?
東京は土地が高いので1棟当たり10億円を超える物件が多数ありますが、ちょっと地方に行くとそんな賃貸マンションは存在しません。せいぜい4億円、5億円ぐらいです。J-REITは、どうせ扱うならば高額な物件のほうが断然に効率が良いので、地方の物件は見向きもされない。地方にはすごく投資に向いている物件があるにも関わらず、流動性がまったくない。結果、東京の物件は運用利回り3%程度なのに対して、地方の物件は6~7%と大きな差が生じてしまっています。

これは、おかしい。僕は兵庫県姫路出身です。白鷺城のあるところです。人口が10万人いる大都市です。でもJ-REITは入ってきていません。駅前にはいい物件があります。オフィスビルも商業ビルも、賃貸マンションも、地元の人間には人気の高いものがいくつもあります。なのにJ-REITは入っていません。放置されています。そんな物件が、そんな町が、日本全国にたくさんあります。これはおかしいと僕は思うのです。

そんな現状を打破するツールが、手段が、僕はデジタル証券だと考えています。おそらく僕の母親が「不動産の小口の投資商品が欲しい」と考えたとき、今はJ-REITしか手段がありませんが、中に入っている物件は東京のどこだか分からないもの。姫路の駅前のあのビルが入っていれば、同じ利回りであっても、母親は選ぶだろうと僕は思うのです。

こういった感覚、皆さんにもあるのではないでしょうか。そういった人たちのニーズ、期待に応えられるのが、このデジタル証券なんです。まずは一般的な、東京の築浅で駅近のきれいなアセットで始めますが、近い将来、デジタル証券を作り、小口化します。その先は、真の目的が地方再生ですので、地方に眠っている、今までなぜか放置されてしまっていたような不動産を、この仕組みを使って投資商品に置き換えていきます。