2025年1月期までの11期連続で増収・増益を続けるアルトナー(2163・東P)に注目したい。設立は1962年。市場規模1兆2,000億~1兆5,000億円といわれる技術者派遣の領域で、長い歴史を持つ企業でありながら、今なお進化を続けている。
【業務内容】
大学・大学院・高等専門学校・専門学校で学んだ理系の学生を正社員として採用、研修を行い「エンジニア」を育成する。エンジニアは、輸送用機器・電気機器・精密機器など各種メーカーにて開発を行う「派遣」、あるいは、案件ごとに同社内で組成されたプロジェクトチームに配属されて成果物を顧客企業に納品する「請負・受託」のいずれかに従事する。
競合ひしめく中、同社の大きな特長には次の3つが挙げられる。
特長① ハイエンド領域
モノづくりは「研究開発」から始まり、そこで生まれた製品の基本設計を行い、試作を重ね、その後、製造、販売、運用保守という形で上流から下流に工程が流れていく。同社はエンジニアの多くを上・中流工程に配属しており、その比率は業界トップクラス。結果、高単価を実現している。
売上高を顧客企業別に見ると1位本田技研工業、2位本田技術研究所、3位ニコン、4位レーザーテックと、上位には自動車関連メーカーと半導体製造装置メーカーが並ぶ。自動車関連メーカーではハイブリット車の基本システム設計や電気自動車のブレーキ制御システムの開発、自動運転ソフトウエアの開発などに携わり、日本の先端技術を支えている。
上流工程の比率の高さは「景気に左右されない」というメリットもある。リーマン・ショック時でも上流工程に従事したエンジニアは契約解除が起きなかった。実際、顧客企業の研究開発費は2008年9月には落ち込んだものの翌年から毎年、着実に増加を続けている。先述した電気自動車や自動運転車など、ニーズの高い領域については今後も旺盛な開発ニーズが続くとみられる。
特長② 信頼感
64年目を迎えた同社は多くの顧客企業と実績を積み重ねてきた。こうして醸成された信頼感の下、経験を持たない新卒エンジニアの配属も可能にしている。
ちなみに祖業は重工業向けに「工業用手袋」の製造・販売を行っていた。高度経済成長下で顧客企業の要望に沿うかたちで設計開発へと対応領域を拡大すると、その後は関連ノウハウをもった「人財」を提供。現在の形態となった。
特長③ 無期雇用
エンジニアを正社員として雇用する。顧客企業での業務が終了しても次のプロジェクトの用意や研修を行ってブラッシュアップを図るなど、安心して長く働く環境を整えている。
同社はパーパス(存在意義)に「日本が世界に誇る財産であるエンジニアの成長、自己実現をサポートする」を掲げている。資源が乏しい日本における、世界に誇れる財産としてエンジニアを捉えており、育成制度はもちろんのこと、顧客企業への転籍を希望する場合には背中を押すこともある。
【直近業績】
26年1月期の第2四半期(2~7月)決算は売上高が前年同期比7.9%増の58億7,600万円、営業利益が同14.5%増の10億9,900万円だった。通期目標をそれぞれ50%以上クリアしており、12期連続の増収・増益は視野に捉えている。
売上高を業種別で見ると、輸送用機器が前年同期比17.5%増と業績を大きくけん引した。米国の関税措置など先行き不透明感がある中でも、顧客企業の開発ニーズは依然として旺盛だ。エンジニアの平均単価は前年同期比219円増の4,676円と高水準が続いている。
今期からスタートした中期経営計画では30年1月期の売上高を187億円、年平均成長率10%以上を掲げた。達成にはエンジニアの増員が不可欠。昨今の人財不足を鑑み、戦略的な請負・受託事業へのシフトを図り多種多様な人財活用を推進している。元エンジニアの社会復帰などをサポートすることで、外部人財の活用の糸口をもつかむ。
25年9月には初となるM&Aを実施。ソフトウエア開発会社を傘下に収めたが、今後は化学や土木建築など新たな専門技術領域の獲得を視野に入れながら、業績拡大を図る。
【株主還元】
今期の配当は中間42円、期末42円、年84円と、前期比2円の増配を予定している。利益増額に伴い11期連続で増配中。配当性向は50%をベースにしているものの、足元では70%となっている。
※本稿は10月30日に広島県・呉で開催された個人投資家向け会社説明会におけるアルトナー執行役員経営戦略本部長の藤岡了氏の講演内容からポイントを抜粋したものです。
※本稿は10月30日に広島県・呉で開催された個人投資家向け会社説明会におけるアルトナー執行役員経営戦略本部長の藤岡了氏の講演内容からポイントを抜粋したものです。
※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。

