業績良好、足元の株価も堅調なイワキ(6237・P)に注目したい。先ごろ2035年を最終年度とする10年ビジョン「イワキグループビジョン NEXT10」を発表した。前10年ビジョンは1年前倒しで達成、ここで掲げていた「10年で事業規模を2倍にする」に再びチャレンジすることを表明している。
業績良好
▶今期は5期連続の営業増益を計画
25年3月期は減益予想から一転、営業利益では前期比7%増の58億4,500万円と、4期連続の増益で着地した。今26年3月期も5.4%増益を計画している。
配当については、前期は期初計画の年間58円から70円に引き上げ、今期は76円と、さらなる増額の方針を示した。決算と同時に配当方針の変更を発表して、配当性向を30%から35%以上に引き上げ、さらに「下限配当70円」という条件が追加された。
▶米国向けが伸長、半導体も復調の兆し
前期は、半導体・液晶市場向けで使われる空気駆動ポンプについては特に中国・韓国向けで不調だったが、それ以外の製品は総じて好調だった。水処理市場や医療機器市場向けで使われる定量ポンプ、回転容積ポンプなどが順調で、米国市場向けは売上高で16年の上場来最高額を更新した。
今26年3月期については、水処理市場、医療機器向け市場の順調な伸びが続くこと、加えて半導体・液晶市場の復調を想定している。会社側は売上高を前期比5.8%増の484億3,900万円、営業利益を同5.4%増の61億5,900万円と計画している。
決算と同時に新長期ビジョン「イワキグループビジョンNEXT10」を発表した。35年3月期までの10年間で売上高1,000億円と、25年3月期実績457億円から2倍超の成長を掲げている。
事業内容
同社は化学薬品“ケミカル”を移送するポンプの専業総合メーカー。金属を溶かす硫酸や塩酸などの劇薬であっても、漏らさず安全に移送することがケミカルポンプの使命。
1956年にビーカーやフラスコなど理化学機器の販売会社として創業すると、セールスで訪れた実験室や研究所では劇薬を移送するための高品質なポンプが強く望まれていることを知る。これに応えるべく59年にはケミカルポンプの開発と販売を開始した。
安定成長
かつては売り上げの過半を半導体向けが占めていた。半導体製造装置の中で数多くのケミカルポンプが働いていた90年代から2000年初頭にかけて同社の業績は大きく増減を繰り返した。いわゆるシリコンサイクル、業界特有の景気循環の波を大きく受けたためで、以降、同社は水処理や医療機器など半導体「以外」の領域を伸ばすことで安定した成長を続けている。
製品特徴
イワキのポンプは幅広い分野で活用されている。化学工場や鉱山、あるいは上水道施設で薬液を注入して水道水を確保したり、食品製造の現場では、例えばオリーブオイルと塩など材料の比率を定めて注入することでサラダ用ドレッシングを作っている。映画館ではプロジェクターの中にある光源を冷却したり、人工透析装置や血液分析装置などの機器に組み込まれて医療現場を支えたりもしている。
強みは「デパート戦略」だ。豊富な製品ラインナップと、これらを駆使するノウハウ、世界規模の生産販売・サポート体制を持ち、「流体を制御する」機能に関してはワンストップで顧客の課題解決を図る。
▶顧客ニーズを一括受注
扱うポンプは手のひらサイズから、ドラム缶25本分の液体を1分間で送ってしまうような世界最大クラスまで。埼玉県と福島県にある国内2つの工場のほか、ドイツ、中国、台湾、オーストラリア、米国の5か国に、日本から部品を送って組み立てるノックダウン生産拠点を置くことで納期短縮と在庫の効率化を実現した。
加えて国内13、海外15か国・20社のグループ会社で、手厚く顧客をサポートする。ケミカルポンプはカタログから選んで購入・設置するだけの単純な機械ではない。現場に応じたカスタマイズと、納品後も絶えずメンテナンスが必要だ。そんな同社のきめ細やかさは、近年ではポンプのみならずタンクやパイプ、ノズルなど周辺機器についても液体の量や圧力、濃度をコントロールするパッケージでの受注に発展している。