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銘柄・相場情報2025年5月15日

企業研究 オオバ(9765・P) 社会課題解決ニーズ高まり背景に堅実成長が続く

「まちづくり」分野でトップシェアを誇る総合建設コンサルタントのオオバに注目したい。

4月17日開催の個人投資家向けIR(投資家向け広報)セミナーでは、辻本茂社長、片山博文常務執行役員が同社の強みや成長戦略を語り、好実態が鮮明になった。株価は15日前場終値で1046円。コロナ・ショックで世界的暴落を見た2020年3月の395円を底に、以降は上昇トレンドが続く。24年5月期まで13期連続で営業増益と業績も好調。期末に向かって増配と優待拡充を発表するなど株主還元にも積極的だ。

【会社概要】100年企業の「存在感」発揮
1922年に測量会社として創業、2022年に100周年を迎えた。日本の建設事業には「設計・施工分離の原則」が定められている中で、同社は調査・計画から設計までの「施工の前段階」を担う。

手掛ける主な業務は次の通り。
▼設計業務……道路や上下水道施設の設計、橋梁(きょうりょう)・トンネルの耐震補強設計、地すべり・斜面崩壊に係る解析やハザードマップ作成など

▼地理空間情報業務……最新IT機器を駆使して地理・地形を測量、用地取得や建物移転に要する費用算定など補償調査にも対応

▼環境業務……土壌対策、水質保全や廃棄物処理などに配慮した環境施設計画、水やエネルギーの循環計画を策定する

▼まちづくり業務……単一施設にとどまらず都市計画や区画整理など基盤整備事業と連携して、福祉、防犯・防災、緑、にぎわいなど、様々な角度の魅力を持ったまちづくりを企画提案する

これらの業務をワンストップで提供していることがオオバの大きな強み。 “100年企業”として幅広い専門知識と高品質な技術を提供するのみならず、関係者間における合意形成に向けた高い調整力を発揮している。

【直近業績】増収増益トレンド継続
今25年5月期第3四半期は増収増益で利益率も改善し、好決算だった。売上高は前年同期比11.6%増の120億100万円。営業利益は同16.1%増の12億1,400万円。売上高営業利益率は前年同期の9.7%から10.1%へ改善した。

従来から手掛ける建設コンサルタント業務が堅調だった。加えて、社会課題の解決ニーズ、具体的には老朽化した社会インフラの維持管理などの官公庁向けが積み上がっている。民間向けについても、例えば熊本県内の半導体工場建設に絡む開発許認可・土木設計業務など、ものづくりの国内回帰と海外資本参入による産業用地にかかわる業務が増加した。

【株主還元】増配&優待拡充で長期保有に報いる
28年5月期を最終年度とする中期経営計画では、総還元性向60%程度、配当性向50%程度を掲げている。25年5月期の配当については中間、期末ともに20円を予定していたが、3月に期末配当を22円に上方修正した。

同時に株主優待制度の拡充も発表している。保有年数1年未満かつ1,000株以上の保有者に対しては、贈呈するクオカードを2,000円から2倍の4,000円へ引き上げた。加えて「1年未満または1年以上」と区分していた保有年数に「3年以上」を新設し、クオカードの上限を7,000円から1万円に引き上げるなど、長期株主への還元を手厚くしている。

4月には自己株取得も発表した。上限2億円・25万株(自己株式を除く発行済み株式総数の1.57%)を来年2月末にかけて取得するとし、同時に、4月末には自己株25万株を消却している。

なお、オオバの配当性向は44.2%(前期実績)と、業種平均33.2%、上場企業平均32.6%と比較して高い水準を維持する。ROE(自己資本利益率)についても11.8%と、業種平均10.7%、東証プライム平均9.6%を上回っている。

【成長可能性】単価上昇×市場拡大で次の100年へ飛躍
▼技術者単価上昇
国土交通省が発注する設計・測量など「設計業務委託費」の積算に用いる全国一律の単価が年々上昇している。25年度までの直近3年間では5.4%、5.5%、5.7%と累計16.6%増、12年度比では58.6%引き上げられている。この傾向は今後も続くとみられ、オオバの利益率改善に大きく寄与することが期待される。

▼既存市場拡大
政府予算における公共事業関係費の中で近年は「防災・減災、国土強靭(きょうじん)化」に対する上乗せが続く。その中でオオバが既に受注している自衛隊施設の調査設計業務を含む「施設の強靭化」については、23年度から27年度の5年間で4兆円と、23年度までの5年間の1兆円から大きく拡大している。

▼新規分野開拓
神奈川県川崎市内の緑地におけるカーボンニュートラルに向けたグリーンインフラ構築、風力発電など再生可能エネルギー関連、スマートシティの実装化など、社会課題の解決を背景に市場の拡大が期待できる新規分野が多数、広がっている。

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