【ライブ・エンタメ市場 2023年にコロナ前を上回り過去最高更新の公算】
コロナ禍から華麗な復活を遂げている業界に音楽ライブ・コンサート業界がある。
ぴあ総研の調査によれば、ライブ・エンタテインメント市場規模は東日本大震災後、年平均8.3%成長を遂げ、19年には6,295億円と初めて6,000億円を突破した。しかし、20年は2月以降、新型コロナの影響でほとんどの公演が開催中止や延期となり、市場規模は1,106億円と大幅縮小を余儀なくされた。
続く21年もイベント開催における収容人数や収容率の制限が完全に解除されないまま、感染の第2波、第3波が到来したことから市場回復が遅れていたが、秋ごろから人流や経済活動の回復とともに緩やかに浮上に向かう軌道をたどり、コロナ禍前のほぼ半分の水準(3,072億円)に回復。コロナ禍3年目の22年は、感染拡大抑制と経済活動の両立が図られる中で経済正常化が進み、市場規模は5,652億円とコロナ禍前の9割水準を取り戻してきた。
そして23年。政府は1月27日からイベントの収容人数制限を完全撤廃した。コロナ禍で抑制された需要と供給の反動増、ライブ会場不足問題の解消、チケット平均単価の上昇などもあり、市場規模は6,330億円とコロナ禍前を上回り過去最高更新、25年には6,639億円と拡大していくことが予測されている。成長軌道に乗るライブ・エンタテインメント市場に軸足を置く関連企業をチェックしたい。
【韓国三大芸能事務所の子会社へ】
ストリームメディアコーポレーションは20年にエスエム・エンターテインメントの日本法人であるSMEJを吸収合併した。エスエム・エンターテインメントは韓国の三大芸能事務所の一角(他はYGエンターテインメント、JYPエンターテインメント)。現在、K-POPアーティストのIP(知的財産)を活用したビジネスを展開する「エンターテインメント部門」と、韓流放送チャンネルの運営と韓国コンテンツの版権取引を行う「ライツ&メディア部門」の2部門体制で事業を展開。
【人気K-POPアーティスト多数所属】
同社はBoA、東方神起、少女時代など、世界で人気を誇るエスエム・エンターテインメント所属アーティストの国内マネジメント権利を独占し、アーティストIPを活用したビジネスを多角的に行う。同事業は新型コロナ感染症の影響で公演開催ができず打撃を受けたが、23年のコンサート動員数は155万人が想定され、コロナ前の19年実績(151万人)を上回る見通し。コロナ期間中、日本を含む世界で人気が急上昇したNCTやaespaといったアーティストが、今年スタジアムやドームでの大型公演を複数回行い動員数も増加。現在日テレなどにて放送中のサバイバルオーディション番組からNCTの新グループがデビュー予定であり、今後国内を中心に活動していくなど、アーティストラインナップの強化による実績拡大も期待できる。
コンサートの回復に付随してグッズ(MD)の販売も好調である。特にコンサートグッズに限らず、IPを活用したコラボグッズの販売や期間限定ストアを運営することでビジネス領域を拡大している。
【韓国ドラマの人気上昇にも注目を】
同社は韓国ドラマなど人気コンテンツを買い付け、自社チャンネルのKNTVを含む放送局、BS・CSチャンネル、動画配信事業者への販売や、自社チャンネルであるKNTVの運営も行う。
韓国地上波テレビ局をはじめとするドラマ作品を、国内韓流チャンネルにおいて51%と高い割合で日本初放送していることが強み。韓国公共放送局KBSが5年ぶりに手掛けた歴史大作「太宗イ・バンウォン」などの大型時代劇や、エスエム・エンターテインメントグループのシナジーを活用し、人気アーティストが出演する大型コンサートを生放送している点も特徴に挙がる。
【今12月期は4期ぶり営業黒字転換へ】
業績は前述の通り、新型コロナの影響でエンターテインメント事業が正常稼働できず、20年12月期~22年12月期は営業赤字が続いた。
一方、今23年12月期はエンターテインメント事業は正常化に向かっており、オフラインコンサートの積極開催、アーティストIP数の強化、ビジネスポートフォリオ拡大により営業黒字転換を見込む。これに対し、今第2四半期は売上高48億6,400万円(前年同期比57.2%増)、営業利益2億7,100万円(前年同期は1億4,700万円の赤字)と好調。例えば「東方神起」は、今年2~6月のツアーで東京ドーム公演30回、全国ドーム公演89回と、いずれも海外アーティストとしては最多の公演数を記録しており、コロナ後のリアルイベント復活、コンサート復活の恩恵を存分に享受している。
来期からは既存事業の強化および拡張、新規事業の開拓による収益源の多角化に努め、中長期に渡る安定的な成長を目指す。キャラクターなど非肖像IPの展開や、ITを活用したファンビジネスの領域の拡大にも取り組んでいく。