高炉3社の決算が出そろった。2025年3月期は最大手の日本製鉄(5401・P)が厳しい見通しとなり、JFEHD(5411・P)は増収増益、神戸製鋼所(5406・P)が増収減益の見通し。
3社は高配当利回りのバリュー株として人気を集めていたが、3月の配当権利落ち後はさえない展開となっている。今期の配当は期初予想ではJFEが増配、日本製鉄と神戸製鋼が前期比横ばいとなっている。また、決算を機に好業績を背景に配当や自己株式の取得など株主還元を強化する企業が続出しており、3社の相対的な魅力が薄れた面もある。決算内容や今後の注目ポイントなどについて、再点検してみたい。
日本製鉄の今期は売上高が前期比0.8%減の8兆8,000億円、事業利益が同25.3%減の6,500億円となる見通し。在庫評価などの影響を除いた実力ベースの営業利益も同19.8%減の7,500億円と大幅な減益を見込んでいる。
3社の中でも、今期の収益環境を最も厳しくみており、減益幅が大きくなる。価格面では景気低迷で国内需要の低迷が続く中国による鋼材の安値輸出と国際市況の低迷を警戒している。その一方で、原料炭については順調な経済成長が続くインドの鉄鋼メーカーによるスポット市場での買い付けよる価格上昇を警戒。原料と製品のデカップリング構造によるスプレッドの低迷をリスク要因として挙げている。同社では決算説明資料の中で「未曽有の厳しい状況が当面継続すると見ざるを得ない」としている。
こうした厳しい認識に基づき、今期も生産設備の構造改革を進め、製品の競争優位性を高める方針だ。26年3月期は実力ベースの事業利益で9,000億円以上を目指す。米国に政治情勢で不透明感が漂うものの、USスチールの買収も進め、将来ビジョンの1兆円の利益水準の早期達成を目指している。
JFEHDは実力ベースの事業利益が同13.1%増の3,350億円と2ケタ増益、唯一の増配企業として、相対的に高い評価ができよう。今期の鋼材需要は前期並みを想定、鋼材需給についてはやはり中国の影響を警戒している。同社は23年9月に京浜地区の上工程を休止、構造改革に区切りを付けた。現在は高炉7基体制となり最適な生産体制を構築したとしている。操業改善と構造改革によるコスト削減効果は約1,200億円となる。エンジニアリングではカーボンニュートラルや廃棄物発電などの事業が伸びる見込みだ。
今期末には「中期ビジョン」と「第8次中期経営計画」を発表する予定。第8次では7次に比べ、実力ベースの事業利益で倍増を目指すとしている。