TOP  NSJアップデート  銘柄・相場情報  企業研究 エスペック(6859・P) 創業75年の世界ニッチトップ、先端技術・製品開発に不可欠な技術を磨き続ける
銘柄・相場情報2023年4月6日

企業研究 エスペック(6859・P) 創業75年の世界ニッチトップ、先端技術・製品開発に不可欠な技術を磨き続ける

【事業内容】「環境試験器」世界トップ

大阪に本社を構える環境試験器の世界トップメーカー。世界シェアは30%以上、国内シェアは60%以上。経済産業省が世界で勝ち抜く企業などを選定する「グローバルニッチトップ企業100選」を2013年、2020年と連続受賞している。

環境試験器とは、温度や湿度、圧力などを制御して、あらゆる環境を人工的に再現する装置のこと。暑くて湿度の高いジャングル、逆に寒くて湿度の低い降雪地帯といった様々な環境を再現し、その中で、工業製品がどのような環境で使用されても性能や品質が保たれることを確認あるいは保証するための試験が実施される。同社の装置を使えばクライアント企業が試験のため世界各地に出向いたり最適な季節を待つ必要はない。

【3つの強み】

22年に創業75周年を迎えた。不透明な時代にあってもグローバルニッチ企業として持続的に成長できている理由には①世界の先端技術に貢献していること、②グローバルで対応していること、③“真の”サステナビリティ経営に早期から着手していること、などが挙げられる。

強み①世界の先端技術に貢献
競争が激しいスマートフォンの開発。例えば同社では温度85度、湿度85%という環境を提供するなどしてクライアント企業の新製品や新技術の開発を支えているのだが、エスペックの環境試験器を必要としているのはスマートフォンのメーカーのみならず、各種部品を納める企業も同様。かつ、こちらも主要顧客である自動車については、完成品や部品単体はもちろんのこと、部品をある程度組み合わせたモジュール単位ごとなどに試験が何度も何度も繰り返される。

強み②グローバルで対応
前22年3月期には初めて海外売上高比率が50%を超えた(図)。同社の海外ネットワークは50カ国・地域、45社。米国については1983年、中国は85年と早い時期に設立したことはもちろんだが、加えて、61年に日本で初めて環境試験器の開発に成功して以降これまで自身の技術力を磨き続けてきたこともエスペックの強み。2021年3月には「全天候型試験ラボ」を開設。温度、湿度、雪、霧、雨、光、風という7つの環境因子を高精度に制御・可変し、刻々と変化する気象環境を再現することのできる世界初の施設で、非常に多くの反響があるという。

強み③“真の”サステナビリティ経営
特に環境、地球温暖化対策については「事業を通じたCO2削減」に取り組んでおり、具体的には、国内の全ての事業所で再生可能エネルギーの導入を果たしている。結果、同社に環境試験を委託することでクライアント企業もCO2排出量ゼロの恩恵を受けることができる。

【業 績】

売上高については22年3月期より部品調達困難の影響を受けているが、設計変更などあらゆる対策に取り組むことで前期比8.2%増の418億5,200万円で着地した。23年3月期は24.2%増の520億とコロナ禍前の水準に戻る見通し(5月12日に本決算を発表予定)。

【株主還元】

株主還元の強化に取り組むべく配当性向を従来の30%弱から、近年は大幅に拡大。23年3月期は創業75周年の記念配当として1株当たり4円を合わせた年間69円の配当を予定、配当性向は53%を予想している。今後は配当性向30%に加えて「予定必要資金の超過額の3分の1をめどに上乗せする」、つまり、設備投資などで必要な資金を除いた分については3分の1をめどに還元するという方針を明確にしている。

※本稿は2023年3月2日に大阪市内で開催された個人投資家向け会社説明会におけるエスペック代表取締役執行役員社長の荒田知氏の講演内容からポイントを抜粋したものです。