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銘柄・相場情報2025年12月30日

午年相場の傾向を読む 相場格言“尻下がり”の年 いかに凌ぐか?

大発会の日経平均587.49円安でスタートした2025「巳年相場」。年初7営業日(1勝6敗)で1,449.96円安となった際には「どうなることか」と思わせたが、終わってみれば1万444.94円高(26.1%高)で初の5万円大台にも到達した。思えば、2024年「辰年相場」の際も、発会の一時770.99円安で始まりながら、34年ぶりのバブル後高値超えを果たし、6,430.37円高(19.2%高)となっていた。後述の有名な相場格言の「辰巳天井」を地でいくような展開と言ってもいいだろう。戦後の辰年(7回)の平均騰落率26.7%高、巳年(同)15.2%高ともおおむね近似しているが、実際、この2年間に限らず、特にアベノミクス相場始動後のこの10余年は「年間騰落率」と「十二支別平均騰落率」が面白いほど(不気味なほど)マッチしてきた。当欄では毎年指摘している通りで、「今年もまた」といった感じだが、だからこそ気になるのは迎える26年「午年相場」だ。戦後6回の平均騰落率が5.0%安と十二支中最悪。相場格言でも「午尻下がり」とされる年だからだ。

「十干」良好VS「十二支」低迷

まずは例の格言から。「辰巳(たつ・み)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さる・とり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁盛、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる」で、詠み人知らずとされる。

40年前のバブル相場序盤時点で、既に「古くから伝わる相場格言」として知られていたこともあり、状況的にはおそらく「1952年辰年から63年卯年までの相場展開を酔狂な市場関係者がまとめたもの」ではないか、というのが、かねてからの本紙の見立てだ。

それがなぜ、インターネットが社会に広く浸透し、AIの実用化さえ進む現在でも様々なメディアで取り上げられ重宝がられているのかというと、要するに長期的な相場の波がおおむね(干支の)12年サイクルをベースに形成されてきたからではないか。格言で、明らかにネガティブな表現は「午尻下がり」と「丑つまずき」の2つ。実際に、午年の日経平均騰落は6回平均で5.0%安。丑年も同様に6回平均4.7%安。十二支でもマイナスはこの2つだけだ(戦後東証再開となった49年丑年は売買開始日5月16日と年末での比較)。

ちなみに、戦前戦中(日経平均算出前)の東京市場には「フィッシャー式株価指数」があり、同指数の騰落率で午年をさかのぼると、戦時中の42年が26.5%高で、その前の30年は26.6%安。“直近100年の午年”としては4勝4敗、平均3.7%安となるが、マイナスであることに変わりはない。

注意が必要なのは、辰巳「天井」の翌年が午「尻下がり」であること。このパターンでは、古くは52年に日経平均2.1倍高、53年も2月高値まで30.8%高となるも、その後にスターリン・ショックが生じて小幅高にとどまり、翌54年の午年に4年ぶりの下落に転じている。典型例ならバブル相場の大天井。89年末の最高値まで2年間で80.4%高しながら、午年の翌90年は発会から売られて38.7%安。13年ぶりの下落で、そのままバブル崩壊に至った。これは急落とは違うが、アベノミクス相場初期にも2012、13年に大幅高続きで計92.6%高となった後の午年14年の上昇率は7.1%にとどまった。

こうなると、どうしても2年続きで大幅高した24、25年(計50.4%高)の後を受けた午年26年相場が警戒されてくるところ。米国では“AIバブル”が盛んに指摘されていることでもあるし…。なお、米国でよく話題になるのは、(12年ではなく)大統領選挙サイクルに絡んだ「4年周期」だ。1950~2024年のニューヨークダウの騰落率平均では、「大統領選挙前年」の16.1%高が突出して高く、最もパフォーマンスが低いのは「中間選挙年」(つまり26年)の5.2%高――となる。

中間選挙年の日経平均は表①の通りで、やはり4年サイクル中では最も低くなっている。なお、15年以降の日経平均が「3年連続上昇して1年調整」パターンを繰り返してきたのも、この4年サイクルで説明が付く。

とはいえ、「十二支」の12年サイクル(米大統領選の4年サイクルも内包)とは裏腹に、「十干」の10年サイクルでは、少し違った風景も見えてくる。西暦の末尾が6となる年「丙(ひのえ)」の日経平均は戦後6勝1敗で、平均騰落率も13.1%高だ。3割以上の急伸は1986年だけだが、唯一下落した96年も2.6%安にとどまり、派手さはないが堅実、といったイメージだろうか。つまるところ、十干と十二支どちらの影響がより強く出るか、ということになる。

もちろん、正攻法の切り口で①インフレ時代に入って名目ベースでの企業収益拡大期待②企業ガバナンス改善の進展(資本効率や稼ぐ力の向上)③海外主要市場対比での割安感――などを踏まえれば、中長期的な上昇余力はまだまだ大きそう。ただし相場的には、あるいはいったん身をかがめる場面があっても不思議ではない。ともあれ、2020年コロナ暴落も、24年令和版ブラックマンデーも、25年トランプ関税ショックの際にも証明されたように、短期的に押し目をつくる場面があれば、そこが絶好の拾い場となる可能性は極めて高いと言えよう。翌年には「大統領選前年」の黄金サイクルも控えているし…。(K)

①過去の「米国中間選挙年の日経平均」
年間騰落率
1950年 ▲7.3%
1954年 ▲5.8%
1958年 △40.5%
1962年 ▲0.8%
1966年 △2.4%
1970年 ▲15.8%
1974年 ▲11.4%
1978年 △23.4%
1982年 △4.4%
1986年 △42.6%
1990年 ▲38.7%
1994年 △13.2%
1998年 ▲9.3%
2002年 ▲18.6%
2006年 △6.9%
2010年 ▲3.0%
2014年 △7.1%
2018年 ▲12.1%
2022年 ▲9.3%
勝 敗 8勝11敗
勝 率 42.10%
平均騰落率 △0.4%
(☆は午年上昇年、★は午年下落年)

 

②過去の「丙(ひのえ)の年の日経平均」
年間騰落率
1956年 △29.0%
1966年 △2.4%
1976年 △14.5%
1986年 △42.6%
1996年 ▲2.6%
2006年 △6.9%
2016年 △0.4%
勝 敗 6勝1敗
勝 率 85.7%(3位)
平均騰落率 △13.3%