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トップ記事2024年4月22日

市場の“最強気派”転向!? その真意は… マネックス証券 広木隆チーフ・ストラテジストに聞く

証券界きっての強気派として知られてきたマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト(写真)。例えば、「日経ヴェリタス」アンケートの日経平均年間高値予想では、2022年「3万8,000円」(前年末から31.2%の上ザヤ)、23年「3万6,000円」(同37.9%)、今年も「4万2,000円」(同25.5%)と常に高い目標を掲げ、先の4万円到達では“一番の当たり屋”となった。その広木氏、3月22日高値から9.3%安(終値ベース)を経た現在の局面をどうみているのか。イメージ的には「押し目買い一貫、次は5万円!」式の強気節が飛び出しそうなところだが、実際には少々様相が違っていた…。その内容とは。

――日経平均4万円乗せからほどない3月8日付で「目先ピーク 日柄調整へ」として以降、毎週のレポートでは慎重なトーンが目立つが、直近19日付の「日本株 下値めどは見えず 静観が賢明」ではやや“弱気度”が増したような…。「今回ばかりは『落ちてくるナイフ』はつかめない」といった表現もある。

「『一度大きく崩れてしまうとなかなか戻りづらい』というのが相場の常道。高値追いの局面にあっては、誰もが利が乗っていてどんどん上値を買っていけるが、いざ相場が反転すると、上値を買った向きがみな損失を抱えるようになり、ヤレヤレの売りから需給が一気に悪化するものだ」

――日柄を要するにしても、値幅的にはいいところまできたのでは。レポート名で「下値めどは見えず」としながらも、文中には「一目均衡表の雲の下限(3万6,500円程度)が次の下値めど」ともある。19日安値(3万6,733.06円)でおおむね到達したことになるはず。

「あくまでも第1段階のめどだ。いったん踏みとどまっても、今後は雲の下限自体が切り上がり、これを割ってきそうだ。日経平均PERの長期的な平均値として15倍近辺まで下げてようやくフェアバリューとなるのではないか(3万5,000円で15.2倍)」

――間もなく本格化してくる3月期決算発表を経て、1株利益水準が増加すれば、『PER15倍』の日経平均の水準も切り上がりそうだが。

「それは言える。そうなれば現水準でも下値不安は後退しようが、一方で、決算発表を通過してしまえば、上値を買う材料も乏しくなりそうだ」

――それなら弱気に傾く必要はないのでは。短期的な相場のアヤはともかく中長期では株は上がるもの、などと以前に書かれていたような…。

「2月期決算の小売企業の業績の伸び鈍化の背景に『値上げ一服』が挙げられている。消費者に“値上げ疲れ”が生じていて、一部では値下げの動きも指摘される。こうなると、これまでのストーリーは全て変わってくる。今年に入っての相場高騰の背景にはPBR改革など多くの要因が挙げられるが、根幹を成すのは『デフレ脱却』だった。そこから大規模な賃上げやマイナス金利解除など“順回転”につながってきた。この大前提が揺らぐとすればどうか」

「先日、テレビ番組『モーニングサテライト』のサーベイ調査で、『デフレ脱却したと思いますか』との問いに、正直に『分からない』と回答したが、出演者の9割ぐらいが『脱却した』と答えていた。市場全体があまりにも楽観的で、そこに危うさを感じている。最初は期待していた日銀も最近では『利上げありき』の姿勢が感じられ、以前犯した過ち(拙速なゼロ金利解除)を繰り返す懸念が高まってきた」

――広木さんは市場全体が弱気だった時から一貫強気を唱えていた。

「僕は天邪鬼なところもあって(笑)、市場関係者が一斉に強気となって浮足立っている現状には警鐘を鳴らしたくなる。エヌビディアなど少数の人気株に割高感が顕著な米国株もなおバリュエーション調整が必要となりそうだ」

――デフレ脱却は幻に終わってしまうのか。

「それは分からない。相場の先行きを占うにも、
そこをしっかりウォッチしていくことが大事だ」(K)