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トップ記事2024年4月17日

来週が期限 「株主提案」提出ラッシュへ “グリコショック”の余波 議案成立相次ぐか!?

4月も半ばを過ぎると市場の関心を集めるのが「株主提案」。15日には豪州などの環境団体がメガバンク3社と中部電力(9502・P)に対して気候変動対応の加速を求める株主提案を行ったと発表して話題を呼んだ。それでは、なぜこの時期なのか。

株主総会に株主提案議案を提出するには、「総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を6カ月前から有する」という要件を満たしたうえで、総会開催日の8週間前までに通知する必要がある。

3月期決算企業の今年の総会集中日は6月27日とみられるため、8週前なら「5月2日」がリミット。とはいえ、総会集中率は1995年6月29日の96.2%をピークに、昨年6月29日は26.1%まで低下。昨年の場合では6月22~29日を中心に分散しており、実務面も踏まえて考えれば、大型連休前の来週中が提案実施の実質的なリミットと考えてよさそう。

4月16日時点で「株主提案権行使に係る書面の受領」を開示している3月期決算企業はワイエイシイHD(6298・P)のみだが、この先、締め切り前の“提案ラッシュ”が生じれば開示も増え、アクティビスト絡みの銘柄では株価材料としてクローズアップされることにもなりそうだ(5月総会の2月期企業では、ストラテジックキャピタルによるワキタへの株主提案も表面化している)。

三菱UFJ信託銀行の集計によれば、昨年6月総会で株主提案が実施されたのは90社。22年の77社に続いて過去最高を記録しており、アクティビズム隆盛下の今年は3ケタ乗せもあり得る状況か。そして、焦点は件数だけではない。

関係者の注目を集めたのが3月26日総会における“グリコショック”。アクティビストの米ダルトン・インベストメンツが江崎グリコ(2206・P)に提出した4つの株主提案のうち、「剰余金の配当等の決定機関に関する定款変更の件」の賛成率が42.9%に達し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示に係る定款変更の件」も3割を超えたためだ。ダルトン含め外国人保有比率は22%止まり、金融機関の31%など安定株主保有が多く、しかも議決権行使助言最大手・ISSが反対推奨したにもかかわらずの高い賛成率。一昔前の株式持ち合いに安住した経営がもはや通用しないことを強烈に印象付けた形。昨年の株主提案議案成立は東洋建設(1890・P)NCHD(6236・S)などごく一部に限られたが、今年は株主提案の件数増加とともに議案成立が相次ぐ展開となっても不思議のないところだろう。

昨年6月総会で株主提案のあった主な銘柄としては、前出のダルトンがセコム(9735・P)。ダルトン系の米ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドが北越コーポレーション(3865・P)。香港オアシス・マネジメントが熊谷組(1861・P)。シティインデックスイレブンスがコスモエネルギーHD(5021・P)。任天堂創業家系のヤマウチ・ナンバーテン・ファミリーオフィスが東洋建設。毎年多くの企業に提案を行うストラテジックキャピタルは、極東開発工業(7226・P)日本証券金融(8511・P)タチエス(7239・P)文化シヤッター(5930・P)(ダイドーリミテッドは提案要件を満たせず、不受理)――などとなっている。なお、2年前に初の株主提案を実施し、昨年も大林組への提案が注目された英シルチェスターは、昨年来一貫して日本株売却を進めているため、今年の株主提案は見送りか。

ちなみに、株主提案を行うアクティビストの多くは同時並行で水面下での対話を進めているとされ、会社側との合意に達すれば、表面化する前に提案取り下げ→会社側は大規模な株主還元実施、といった展開もあり得る。ともあれ、これからしばらくは決算発表と並んで、株主提案絡みのニュースからも目が離せなくなりそうだ。(K)

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