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インタビュー2025年8月7日

櫻井英明の<愛アール>注目企業トップに聞く 第11回 サンセイランディック

今回は株式会社サンセイランディック(3277・S)の松﨑隆司社長。同社は多くの不動産会社があまり取り組まない底地・居抜き(入居者のいる収益性の低い古アパート)などの権利調整・売買・管理といった『不動産権利調整』を主軸に全国の不動産問題に向き合っている。高い交渉力など数多くの経験と実績を経て培った確かなヒューマンスキルを活かし、100年企業を目指して新たな取り組みにも積極的に挑戦している。6月に世界初の「アルベルゴ・ディフーゾタウン」の認定を受けた長崎県平戸市に米蔵を改修した宿泊施設「The 曜Terrace」をオープン。

6月に平戸市のアルベルゴ・ディフーゾタウン認証式が開催された際に同行取材させていただいた。

なぜ平戸なのでしょう
近年、平戸市をはじめとする多くの自治体で「空き家」「空き店舗」問題が多く取り上げられています。こうした背景を受け、平戸市とサンセイランディックは、2023年9月に歴史的資源を活用した地域活性化および観光振興を推進することを目的として、地域活性化推進の包括連携に関する協定書を締結しました。平戸の美しい城下町に点在する空き家などの利活用に、当社の長年培ってきた不動産再生力をもって地域のお役に立ちたいという思いがあり、地域や行政の皆様のお力添えをいただき、このたびオープンするはこびとなりました。

The 曜Terraceは、元々200年以上前の江戸時代に建てられた米蔵で、所有者は昨年まで建物内に土産店を営業されていました。趣のある建物、特に屋内の梁(はり)はぜひとも後世に残すべきと考え、耐震性、断熱性など安全・快適性を両立させた改修工事を行い、平戸アルベルゴ・ディフーゾタウンのフロント機能を兼ねた総合受け付けやメゾネットタイプの宿泊棟(山・海)、カフェなどに改修しました。客室は樹齢200年を超える黒松の梁・柱を活かしつつ、光と風が抜けるように配慮しています。大人がゆったりとくつろげる、和の要素とモダンが融けあった空間となっています。外壁は江戸時代当時に近い仕様に復元しました。

また8月中にオープン予定の「甚兵衛邸」は平戸藩上級武士の元自邸敷地で、所有者は空き家で悩んでおられました。建物一棟ごと貸し切りできる宿泊施設として、海側の石垣は当時のままで、建物本体は昭和時代に建てられた木造住宅を改修しました。かつて庭には月見櫓(やぐら)があったとされますが、海の向こうにそびえ立つ平戸城を望むサウナに置き換えました。4部屋を備える一棟丸ごと施設のため、何家族かでシェアしたり、様々な集まりに利用したりすることも可能です。メイン設備のプライベートサウナでは平戸産の100%天然アロマオイルを使用したセルフロウリュで心と体を整えながら海を眺め、時々聞こえる船の汽笛の音に耳を傾ける、そんな癒やしの時間を楽しめます。

櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある。ラジオNIKKEIでは火曜「ザ・マネー 櫻井英明のかぶとびら」、木曜「櫻井英明のシン投資知識研究所」などに出演。

アルベルゴ・ディフーゾ(Albergo Diffuso)とは?
イタリア語で、アルベルゴは「宿」、ディフーゾは「分散した」を意味しており、直訳すると分散型の宿となります。分散型の宿では、宿泊は宿に泊まりますが、食事や入浴はその宿泊先の周辺にある飲食店やカフェ、銭湯や温泉を利用します。つまり、アルベルゴ・ディフーゾとは、建物単体ではなく、地域一帯をひとつの宿と捉えることであり、街全体をホテルとみなして宿という機能を分解し、それらを街なかに設けることで、観光客と地域の交流を促していくことを意味しています。

今後の展開は?
まずは第一歩ですが、八幡平や伊豆など各地で地域の役に立つ事業を展開していくことで地方創生につながると信じています。全国約72万件の底地、約130万件に及ぶ築35年以上の木造借家が目の前にありますから、地道に創生や再生に取り組んで関係する皆さまに喜んでいただけるように努力していきます。

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