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「KIBIT」が日本の創薬を変える!!
エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はFRONTEO(2158・G)代表取締役社長の守本正宏氏。特化型AIエンジン「KIBIT(キビット)」が社会課題の解決に挑み、専門家の高度な判断を支援するという最新のビジネスモデルが創薬の分野で進展している。「日本を再び創薬の地に」という思いはスピードアップしてきた印象だ。
――業容を教えてほしい。
2003年の創業以来、「日本企業の誇りを守る」を理念としてリーガルテック分野で活動してきました。リーガルテックとは法律(Legal)と技術(Technology)の組み合わせです。国際訴訟や不正調査において、膨大な電子メールやビジネス文書に対して限られた時間の中で証拠を発見するための技術とノウハウを培ってきました。そして対応分野は法律から金融、知財、人事、医療分野へと様々に拡大。データ解析技術の未熟さにより訴訟に必要な情報が見つからず窮地に立たされる日本企業を守りたい、世界にあふれた医療情報から患者一人一人に合った情報を届けたい――そのような熱意が日々、当社の人工知能技術とサービスを磨いています。
――コア技術の「KIBIT」とは?
自社開発の特化型AI「KIBIT」は、科学論文、カルテや問診の会話など医療におけるテキストデータを解析し、創薬研究者の活動や医療従事者の診断を支援しています。AIの強みである膨大なデータの網羅的な解析はもちろん、非連続的な「発見」を導くことに特化したアルゴリズムによって、人が文章を読むだけでは気付きにくい類似性・関連性を見つけ出すことが最大の特長です。
――非連続的な発見とは?
「KIBIT」が持つ独自アルゴリズムは、人によるバイアスやAIで起こりやすいハルシネーション(真偽が確認できない情報を作り出す)を回避します。一般的なAIと比べて、過去の論文には載っていない新規の関連性を予測・発見し、新しい仮説への着想を得るためにマップ化したり、専門分野を横断して統合的に知見を探索できるといった優位性があります。言うなれば「人の学び、思考過程を創造する」。人間の子供が新しい言語を学ぶように、これが「KIBIT」の設計思想です。
櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある。ラジオNIKKEIでは火曜「ザ・マネー 櫻井英明のかぶとびら」、木曜「櫻井英明のシン投資知識研究所」などに出演。
――ライフサイエンス事業の進展が顕著だ。
「KIBIT」を活用し、未報告の標的分子の発見や仮説生成を行うAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」 が、着実に案件を積み上げています。契約時に発生するアップフロント収益だけでなく、研究進捗に応じたマイルストーンやロイヤリティフィーなど多様な収益構造を持つことも特徴。プロジェクト単価の向上を見込んでいます。
――塩野義製薬との業務提携はどうか。
AI医療機器分野において塩野義製薬(4507・P)と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を進めています。ここで取り組む「会話型 認知機能検査用AIプログラム医療機器(SDS-881)」の製造販売承認取得および社会実装に向けた開発は計画通りに進捗。将来的には製品上市後の販売額に応じたロイヤリティなどによる中長期的な安定成長を見込んでいます。
――最後に一言。
創薬の起点となる仮説を生み出すことで「日本を再び創薬の地に」という思いで、医薬品産業を自動車、半導体に次ぐ基本の基幹産業へと成長させていきたい。薬を必要とする全ての人に適切に薬が届くフェアな社会の実現を目指し、今後も創薬事業を進めていきます。