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インタビュー2023年3月30日

櫻井英明の <愛アール> 注目企業トップに聞く 第1回 インターネットインフィニティー(6545)

シニア向けにデータ活用で「健康寿命延伸」世界トップ企業へ

エコノミスト櫻井英明氏が注目する企業のトップにインタビューする本企画。第1回はインターネットインフィニティー(6545・G)の別宮圭一代表取締役社長。市場が急拡大する中で実は競合不在だという介護関連施設、同社が運営する「レコードブック」の特徴と“少し先の未来”を聞いた。

――本日はレコードブック芝公園にお邪魔しています。利用者の皆さん帰り際スタッフに手を振ったり、とても楽しそうですが、ここはどういった施設でしょう?

レコードブックは「運動指導に特化した3時間のリハビリ型デイサービス施設」です。要介護認定「要支援」から「要介護2」までと比較的軽度の方々に健康寿命延伸、重介護にならないことを目的としてフィットネスクラブのような感覚でご利用いただいております。

――介護施設ではなくフィットネスクラブ、確かに利用者とスタッフの距離が近く活気を感じます。

空間や接客が“介護を感じさせない”はもちろんですが、運動指導についても筑波大学と共同開発したプログラムを提供するなど本格的です。インストラクターがおひとりずつ体調や目標などを把握していますから今日は強め・弱めなどのカスタマイズも可能です。一般的にイメージされる“いわゆる介護施設”には行きたくないけれどレコードブックは楽しいと言う方が多くいらっしゃいます。

――競合は多そうです。

確かに多いですが、多くが要介護5の方までを長時間お預かりする、つまり、ご利用者をケアする家族の負担軽減を目的とするケースが少なくありません。「健康に暮らし続けたい」とご自身の希望でお越しいただくレコードブックのような施設は少数派です。全国に需要はあるものの、直営とFCを合わせても220店舗。コロナ禍で止めていた出店を今後は加速させて、まずは早期に400店舗を目指します。

――そもそもレコードブック、運動の「記録帳」という店舗名が意味するものは何ですか。

ご利用者のデータを蓄積していることが私たちの強みです。そのデータを活用した次の展開を準備しています。最近では「歩行解析アプリ」を開発しました。スマートフォンで撮影するだけで歩き方のクセを洗い出し、改善を促すことで、最もコストパフォーマンスの良い健康寿命延伸の具体策である「転倒予防」につなげます。アプリを共同開発したシニア・ライフ・テクノロジー社には出資も行い、米国の最先端技術を取り入れたソリューションを今後も開発していく計画です。

――2023年3月期はほかにもM&Aを実施されました。

22年10月には正光技建という住宅リフォーム会社を、その前年にはフルケアという福祉用具レンタル会社を子会社化しました。おかげさまで「レコードブックに来ると元気になる」と言う方が多いものの、残念ながら在宅中など「それ以外の時間」に転倒、骨折してしまう方も多く悲しい思いをしておりました。しかし諦めきれず、「今後はトイレやお風呂に手すりをつけましょう」「つえや歩行器を使ってみましょう」など店舗外の生活でもお手伝いができるようになりました。

――軽度「以外」の要介護者に向けた事業も始められています。レコードブックとは相反するような気がするのですが?

住宅型有料老人ホーム2棟を取得しましたが、こちらはチャレンジです。中・重度の要介護者に向けても当社のノウハウが活用できるのか。データとAIやIoTを活用したサービスをすべての介護ステージで展開していきます。

当社の使命は「日本でいちばん健康寿命を延ばす」です。そのためには利用者のケアはもちろんのこと、ICT化が進まずスタッフの数も足りない現場への支援も欠かせません。遠くないうちにロボットが導入されるでしょう。しかし基本的に国は介護を自宅で行うことを推奨しておりますし、ロボットが各家庭に行き渡るのはまだまだ先の話です。当社が開発した歩行解析アプリなどだれもが持っているスマートフォンを使ったサービスを、まずは強化するべきだと考えています。

――第3四半期決算と同時に通期予想を修正されましたが、理由はM&A、つまり「成長に向けて準備が整った」という理解でよろしいでしょうか?

23年3月期の予想については、期首では織り込んでいなかったM&Aが主な要因となり、売上高を44億2,100万円から44億6,500万円(前期比7.1%増)に引き上げた一方で、営業利益は3億1,500万円から8,700万円(同43.9%減)に引き下げました。事業ポートフォリオ分散や顧客層拡大に取り組みつつ、健康寿命延伸という領域では日本のみならず世界の最先端の会社であり続けるよう今後もスピード感をもって進んでいきます。