TOP  NSJアップデート  インタビュー  <特別対談> 経済アナリスト馬渕磨理子氏×日総工産 清水竜一社長 ~前編~
インタビュー2021年11月25日

<特別対談> 経済アナリスト馬渕磨理子氏×日総工産 清水竜一社長 ~前編~

コロナ禍でも「在籍数」拡大を断行

売上高7割増の中計達成に「手応え」

製造派遣・請負など製造系人材サービスを展開する日総工産(6569)。先ごろ2022年3月期第2四半期(2Q・4~9月)決算と同時に通期予想の修正を発表、売上高を760億円から780億円(前期比14.3%)に増額する一方で、営業利益は30億円(同15.4%増)から24億円(同7.7%減)に減額している。代表取締役社長執行役員兼CEOの清水竜一氏に、足元の状況と今後の見通しを経済アナリストの馬渕磨理子氏が聞いた。

――足元の受注状況はどうか。
製造現場におけるコロナ禍からの回復は1Qまで順調だったが、2Q後半からは半導体のみならず、東南アジアにおけるロックダウンが影響してワイヤーハーネスなど、そのほかの重要部品も日本に入ってこなくなった。これが当社の収益を押し下げる要因に。

――しかしトップラインは伸びている。
顧客メーカーが生産調整をしている間は派遣の増員を止めるのが常識。ところが今回は、特に自動車領域について大幅減産からの挽回(ばんかい)生産の発生をあらかじめ“強く”想定しておかなければならなかった。人材の採用・教育を、顧客メーカーの協力を仰ぎながら、具体的には給与の一部補填を受けたりなどして2Qを乗り切った。結果、2Qは売上高で前年同期比11.3%増の366億円という着地になった。

――下期はどう見ている?
顧客メーカーと当社との間では期初に「9月から徐々に生産が回復し、10月以降に挽回生産」と想定していたが、挽回生産は12月から、と、2カ月ほど遅れた。フル稼働でもクライアントが望む生産台数まで上げられるかどうかといった状況、私がこれまで業界で過ごした30年間では見られなかった状況が、いよいよ始まろうとしている。

――トヨタ自動車は先ごろ12月の生産計画を発表、7カ月ぶりに国内全工場での通常稼働を再開して減産から一転、12月としては過去最高水準になる見通しを示した。
顧客メーカーのニーズに応えることはもちろん、当社自身の成長戦略としても、トップラインのベースとなる在籍数の積み上げは最重要課題。コロナ禍でも手を緩めず、結果、この積み上げのおかげで来期は、より高い位置からスタートすることができる。中期経営計画では24年3月期の売上高1,150億円、営業利益67億円を掲げており、投資家の中には直前期となる21年3月期の売上高682億円からの成長について不安視する向きもあった。もちろん当社としては十分に達成可能なものであったが、足元では確度が高まり、その時期が早まることを想定している。

――確かに中期経営計画は、直近の数字からは大きくジャンプアップするように見える。ただ、業績を見る上では「在籍数」がポイントになるとのことで、非常に読みやすくもある。
実際に働いている方、在籍されている方々の人数はもちろん、付加価値を高めて一人当たりの売上高を上げていくという「掛け算」。ただし今期については挽回生産の開始が2カ月ずれ込んだ結果、利益は来期の計上になってしまうため、今期2Qは利益の伸びが鈍化し、通期予想を利益について減額する必要が生じた。

(後編は12月3日付に掲載予定です)

対談の様子は動画でもご視聴いただけます
https://www.nsjournal.jp/nsj_library/nisso-6569/