TOP  NSJアップデート  トップ記事  話題の“10億り人” 秘伝を開陳 「会社を調べ尽くすこと」 「2倍高候補に集中投資」 そして…  Zeppy代表、元芸人 井村俊哉氏に聞く
トップ記事2021年12月7日

話題の“10億り人” 秘伝を開陳 「会社を調べ尽くすこと」 「2倍高候補に集中投資」 そして…  Zeppy代表、元芸人 井村俊哉氏に聞く

元芸人で、現在は10億円を株式で運用する辣腕投資家の井村俊哉さん(写真)。株式専門のYouTubeチャンネル「Zeppy」代表や中小企業診断士の顔も併せ持つ井村さんは、これまでも本紙上で上場企業トップを直撃インタビューしてきたが、今回は15年の投資歴から得た銘柄選びのノウハウや失敗談について逆取材を敢行した。

――株式投資で心がけていることは?

「常にアルファを追求していることかな。コスパの良い銘柄探しを実践してきたけれど、ただ成長するだけ、ただ安いだけでは駄目だなと。マーケットが考えているよりも安くて成長余力の大きい企業を買いたい。コスパという言葉が置き換わったのがアルファ、そんな感じがしています」

――銘柄探しはスーパーでの買い物に通じるとか?

「コスパがいいのはバナナ、納豆、卵。1本20~30円のバナナで得られるエネルギーってものすごくて、株でいうとPERが低くて成長率が高いということなんです」

「割安株を探す物差しとしてPERは必ず見ています。例えばイチゴのPERはトマトよりも高くて、1粒当たりの単価も高いですよね。これがグロース株とバリュー株の違いであって、トマトだと思っていたものが実はイチゴの新種だったりすると、みながこれに気付いた瞬間にぐんと買われるといった具合です」

――上場企業は約3,800社。銘柄選びのノウハウを教えてほしい。

「銘柄発掘は体系化しています。決算短信など開示情報の数値を展開しているサイトがあり、ここで売上高や利益など四半期ごとの数値をチェック。そこから銘柄の発掘、深掘り、買い付けといった3ステップを踏んでいます。発掘の段階では500銘柄程度をリストアップした後に、カタリスト(株価を動かす材料)が出てきそうだとか、業績が良いわりに割安といった銘柄20~30ほどに絞り込む。最終的に投資するのはこのうちの5銘柄くらいです」

「深掘りの段階では妥協せずにあらゆる情報を収集します。海運株を買うとなれば中国など海外の港湾で働く人にメールでコンタクトして現地の状況を調査。船の座礁でスエズ運河が渋滞しているとなれば、船舶の位置情報を捕捉できるシステムの情報を頼るとか。逆に、中国の業者が安く荷室を提供し始めたという話をかぎつければ、売りのタイミングを計る手立てにもなります」

「最後は集中投資。株価2倍が狙える銘柄を大口で持ちます。2倍を取りに行くというと攻めの投資に聞こえるけど、企業の本来価値を考えると時価総額が2倍でも違和感ない銘柄。低リスクで高アルファの会社に集中的に投資します」

――会社に直接聞くこともあるとか?

「IR窓口に疑問をぶつけます。時価総額の小さい会社だと主力は個人投資家にならざるを得ないので、投資家が歓迎する材料を提供してくるかどうかといったところをヒアリングしています」

――三井松島HD(1518)の大株主になったが?

「脱炭素を性急に進めることによって資源価格が高騰しているのは、マーケットの警告ではないかと考えている。ミヤネ屋などの情報番組がエネルギー価格の上昇を取り上げたりすると、資源株は再び上がるとみている。脱炭素というより減炭素が現実的なんです」

「第1線で分析している方から情報をいただいたり、石炭ガイドブックを読みあさるなどして、エネルギーの知識は詰めまくりました。今でも日々30くらいは英文記事で情報を仕入れており、それによってポジションを増やすとかも考えている状況です」

「最大のカタリストは業績です。資源価格の高騰がエネルギー株に大きな利益をもたらすことを、市場は過小評価していると思っています。石炭価格がどのような取り決めで決まるのかとか、実際に価格が上がった場合にどのくらい利益が出るのかといったことを調べ上げました。分からないのは実際の石炭価格のレートくらいでしょうか」

――投資で失敗もしますか?

「めちゃくちゃありますよ(笑)。失敗のほうが明らかに多いです。これだと思った銘柄に資産の2~3割をドカンとつぎ込んでしまうのは悪い癖だなと反省しています。今年は1回の取引で8,000万円の損失を出したんです。投資家人生で、もうぶっちぎりです」

「大口で買った銘柄が下がると不安で仕方がなくなるので、そういう時には会社をもう一度調べまくるんです。インディードに投稿されている会社の口コミをのぞくとかも。こうすることによって、単に需給で売られていると確信できればホールドですし、自分の判断が間違っていたなとなれば損切りします」

――テクニカル分析は活用している?

「持ち株を手放すときのみ参考にします。ある価格帯で出来高が膨らんでいるような場合、この水準を下回ると再浮上は難しいなといった時です。株を買うときはバリュエーションを調べ上げているので問題ないですが、株価の勢いであるモメンタムが強い時点で降りるとなると、テクニカルとか需給で判断せざるを得ない。理性で買って熱狂で売る、です」

――最後に個人投資家へのメッセージを。

「個別の銘柄に投資するということは、インデックス投資より高いパフォーマンスを上げるためです。ちょっと厳しい言い方をすると、そこまで考えずに何となく買うのであるなら、無理せずインデックス投資に専念すべきだと思います」

「会社を調べ尽くしてアルファを取りに行く。こうした作業が好きであれば、ぜひ深掘りしまくって楽しんでください。僕はいつも夢中になっちゃうんです。大事な仕事がたまっているのに、ついついパソコンに向かって企業分析をしてしまうとか(笑)」