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トップ記事2024年5月9日

重工3社 決算で明暗 中期では防衛・航空が成長を牽引

川重S高 今期は最高益更新 IHIも大幅高 三菱重は中計待ち

川崎重工(7012・日足)

大手重工3社の2024年3月期決算と今期見通しが出そろった。三菱重工(7011・P)は8日の後場、取引時間中に発表。24年3月期の事業利益は前期比46.1%増の2,825億円と大幅増益ながら、会社側計画の3,000億円を下回った。25年月期予想は同23.9%増の3,500億円とこちらは市場コンセンサス(約3,900億円)を下回った。

野村証券では「第一印象はややネガティブ」、SMBC日興証券は「実績、計画ともにやや物足りない内容」とした。決算を受け、売りが先行、7日の高値から9日の安値1,234円まで15%強の急落となった。ただ、5月28日に中期経営計画の発表を予定しており、中期的に高い成長が見込まれる防衛・宇宙事業やGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)、水素など脱炭素関連、株主還元策などに対する展望が示され、見直しのきっかけとなる可能性は高い。

一方、好感買いを集めたのが8日の引け後に発表したIHI(7013・P)と9日の前引け後に発表した川崎重工(7012・P)だ。IHIの前期は営業損益が702億円の赤字だったが、同社が部品を供給するプラット・アンド・ホイットニー(P&W)の航空機向けエンジンで品質問題が発生するという一過性の要因が大きかった。特殊要因を除けば、実質的には黒字を確保しており、今期は1,100億円の黒字を見込む。前提為替レートは1ドル=140円と足元と比較して保守的な水準。今期の航空・宇宙・防衛事業の売上収益は前期比27%増の5,400億円と3割近い伸びを計画している。防衛関連については現状1,000億円規模の売上収益を30年度には2.5倍規模、営業利益率10%を目指しており、航空・宇宙・防衛が同社の成長を牽引する見込みだ。中国をはじめとする覇権主義国家の台頭などを背景に、抜本的な強化を目指す日本の中期防衛計画を踏まえると、重工3社の防衛事業は売上高、利益とも高い伸びが続くと予想される。

川崎重工は9日後場、カイ気配で始まり、その後700円ストップ高となり3月の年初来高値を一気に更新した。25年3月期は受注高、売上収益、事業利益ともに過去最高を見込む。IHIと同じく、P&W関連の特損が一巡するため航空宇宙システムが大幅な増収・増益となるほか、パワースポーツ&エンジン(PS&E)はメキシコ工場の稼働、オフロード四輪車の好調などが寄与する。先進国向けの2輪車も増加の見込みだ。防衛関連では統合防空ミサイル、スタンド・オフ防衛、指揮統制・情報関連など7分野を重点的に強化する。(M)

重工3社の25年3月期 業績予想
三菱重工(7011) 川崎重工(7012) IHI(7013)
受注高 58000(-13.2) 23600(+13.3) 17200(+24.9)
売上収益 49000(+5.2) 22500(+21.7) 16000(+21.0)
事業利益 3500(+23.9) 1300(+181.4) 1100(-)※
年間配当 22(20) 140(50) 100(100)
※IHIは営業利益、三菱重工の配当は分割考慮。単位:億円、%、配当は円、カッコは前期実績