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インタビュー2023年3月15日

馬渕磨理子の気になる企業 アイリックコーポレーション(7325・G) 「株主還元」大幅見直し、その背景を聞く

2Qは「想定上振れ」、3年後の「成長」に向けて「着実に」

日本初の来店型保険ショップ「保険クリニック®」を運営するアイリックコーポレーション(7325・G)。先ごろ株主還元の方針をガラリと変えたことが話題に上った。代表取締役社長CEO勝本竜二氏に、経済アナリストの馬渕磨理子氏が聞く。

――まずは直近決算の振り返りから。増収減益をどう見たらよいか。

2023年6月期第2四半期(2Q)は売上高が前年同期比13.8%増(28億8,800万円)、営業利益は同23.85%減(1億3,700万円)だった。減益ではあるが、期初計画では赤字を想定していた。

――想定上振れ、好調の理由は?

当社が手掛ける3事業とも好調だった。中でも、官公庁や大手金融機関などに自社開発システム「スマートOCR®」を提供する「システム事業」は売上高が前年同期比50.2%増と大きく伸びた。

――「スマートOCR®」は導入先が拡大している。競合はいない?

OCR(光学文字認識)の競合は多い。しかし当社は早い段階から参入していたことに加えて、そもそも「保険クリニック®」で扱う複数社の、手書きだったりとフォーマットが統一されていない複雑な保険証券を効率的に読み込むを目的に開発していたこともあって、精度が非常に高い。昨年からは国税庁が確定申告で運用、埼玉県警でも導入が始まった。

デジタル庁が2021年9月に発足するなど国内のDX(デジタルトランスフォーメーション)は始まったばかりで、OCRはその“入口”となる存在。利用がさらに広がることを期待している。

――ほかの2事業はどうか?

「保険クリニック®」は直営店が60店舗あり、ここで発生する保険会社からの手数料をベースとする「保険販売事業」は同8.0%増だった。オリコン顧客満足度®ランキングにおいて来店型保険ショップとしては史上初となる3年連続1位となるなど「保険クリニック®」の取扱商品の充実度やスタッフ提案力の高さ、アフターフォローなどが高く評価されているようだ。

高い満足度の裏付けとなるのが、これも自社開発した保険商品比較・分析システムであり、このシステムを共有するフランチャイズ店舗の運営、あるいは競合する保険代理店や金融機関などへシステムそのものを提供する「ソリューション事業」も9.6%増となった。

――スマートOCR®も、保険商品比較・分析システムも、気になるのは「ストック」の積み上がり方だ。

システムは開発などコスト先行型のビジネスだが、例えば国税局向けは運用2年目となる今期からはフローではなくストック収益となる。そして足元では売上高が大きく伸びており、2Qで50%増だった「システム事業」の勢いはおそらく下期も続き、さらに、保険商品比較・分析システムの導入が地方銀行を中心に拡大していることから「ソリューション事業」についても拡大傾向は続くとみている。

――先行投資が回収フェーズに入ってきた、と。

ようやく。フローの割合がまだ多いが、楽しみなタイミングではある。

――そうしたタイミングもあってか今23年6月期は「再始動」、そして25年6月期を「成長」局面と位置付けている。

来期までは投資を強化してまずは売上高を伸ばす。22年実績51億円から、3年後84億9,500万円~87億9,500万円を目指す。足元では広告宣伝費を前期比2.5倍ほど投下してテレビCMを流したりJR東日本で車両広告を出すなどした結果、「保険クリニック®」店舗来店者やウェブサイトのクリック数が増加してきている。

――2Q決算と同時に優待廃止と増配、自社株取得を同時に発表した。

おかげさまで株主数がかなり増えたこともあり優待コストが利益を大きく圧迫するように。この原資を配当に回す方が良いだろうと判断した。配当額は1株当たり12円から15円に、配当性向は72%超にまで高めた。加えて未処分利益が少し積み上がってきたこともあり、こちらも株主の皆さまに還元しようと自社株買いに踏み切ることにした。

――先行投資と並行して増配を決めるあたり自信の表れと捉えて良さそうですね。

そうですね。強い意気込みを持って決断しました。