JPX山道CEO 「市場の信頼を揺るがす由々しき事態」
循環取引による粉飾決算に手を染めたオルツ(260A・G)がストップ安(55.5%安の24円)。
東証は7月30日午後4時30分、上場廃止の決定を発表。7月30日から8月30日まで整理銘柄に指定し、8月31日付で上場廃止とする。最終売買日は曜日の都合で8月29日になる予定。続いてオルツが同日午後5時35分、民事再生法の適用を申請したと発表した。負債総額は約24億円。
オルツは昨年10月11日に上場したばかり。上場歴はわずか10カ月半(323日)で、2008年以降では上場審査時の粉飾決算が明らかになったエフオーアイ(7カ月間)、資金繰り悪化で民事再生法適用を申請したモリモト(10カ月)に次ぐ短命上場となる。
銘柄 | 上場日数 | 上場日 | 上場廃止日 |
FOI(6253・東マ) | 206日 | 2009年11月20日 | 2010年6月15日 |
モリモト(8899・東2) | 301日 | 2008年2月27日 | 2008年12月25日 |
オルツ(260A・G) | 323日 | 2024年10月11日 | 2025年8月31日 |
東証を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)の山道裕己CEO(写真)は、7月30日午後3時30分から開催の定例記者会見でオルツに関し以下のように述べた。
「第三者委員会の報告書の中で、上場前から経営幹部(CEO、CFOなど役員)が関与の上で売上高の9割を架空計上し、東証への新規上場審査においても虚偽の説明をしていたことが明らかになった。東証は25日に上場契約違反(新規上場時の宣誓書違反および虚偽記載)で上場廃止の恐れがあるとして監理銘柄に指定した。IPO前から投資家をだまし、監査法人をだまし、主幹事証券をだまし、われわれの上場審査をだましてきた。IPOや監査に関わる制度の信頼を揺るがす事態となり大変遺憾」。
東証審査が十分かどうかという記者質問に対し、「会社が上層部がみんな一緒になって意図的に悪意を持ってだまそうとした場合には監査法人ですら見抜けないわけですから、審査の妥当性がないとは全く思わない。悪意を持ってやれば一定期間はだませるのだろう。それが未来永劫続くかと言えば今回発覚したようにそんなことはない。従ってわれわれとしても過去の事例に基づき事前の予防策や改善策を打ってきているが、ここまで徹底してやられるとなかなか事前には察知できないものと思っている。ただ今回は由々しき事態と思いますので再発防止に向け何ができるのか、われわれだけでできることは限られるため、監査法人、主幹事証券など市場関係者のみなさんと協力しながらいろいろ考えていきたい」とした。
グロース改革で市場活性化に向け動く中、こうしたケースが出てくると投資家が疑いの目を持ってしまう部分もあると思うとの記者の投げかけに対しては、「常にそうした人たちが出てくる可能性はある。従って根絶はなかなかできない。われわれとしてはマーケットの信頼性を持続させるための方策をこれからも打っていく。だからといって根絶はなかなか難しい。その中でどうバランスを取るかということだと思う」と苦渋の顔で述べた。
オルツは東京地裁の監督のもと事業を継続し、スポンサー支援によって再生を目指すという。業績は“偽物”だったが、AI技術は“本物”なのか。スポンサー探しの行方も注目される。(Q)