「防衛増強」「製造業の国内回帰」で連続増益へ
「まちづくり」分野でトップシェアを誇る総合建設コンサルタントのオオバ(9765・P)に注目したい。7月10日に前2025年5月期決算の発表を控えている。オオバが手掛ける領域は、橋梁や道路などインフラ施設の点検から、生産・物流拠点など産業用地の開発・土木設計、自衛隊施設の最適化を目的とした調査までと多種多様だ。多くの事業が「社会課題解決の具体策」であることから、活躍余地が今後ますます拡大することが期待されている。
――業績が好調だ。
2012年5月期から24年5月期までの12年間で売上高は1.5倍強、営業利益は10倍強、営業利益率は約7倍、当期利益は約35倍に拡大している。14期連続の営業増益を目指す25年5月期については、第3四半期の売上高が前年同期比11.6%増の120億100万円、営業利益は同16.1%増の12億1,400万円と、良好な進捗を確認済みだ。
――好調の理由は?
従来から手掛ける建設コンサルタント業務の堅調に加えて、区画整理事業において大型案件の業務代行収入が発生した。官公庁向けでは自衛隊基地の最適化に伴う測量や設計など、いわゆるミリタリーエンジニアリング(防衛土木)が着実に積み上がっている。
民間向けも好調だ。円安や地政学上リスク等によって日本企業の生産拠点、ものづくりの国内回帰やインバウンド投資家の旺盛な進出意欲が高まっており、開発や許認可などが増えている。デフレからの脱却により、30年間封印してきた日本企業のアニマルスピリッツが大きく喚起されることを期待している。
――受注拡大に加えて「単価」上昇も追い風だ。
国土交通省が発注する設計・測量など「設計業務委託費」の積算に用いる全国一律の単価が年々上昇している。25年度までの直近3年間では5.4%、5.5%、5.7%と、累計16.6%(12年度比+58.6%)だった。この傾向は今後も続くとみられ、オオバの収益性改善の推進力になると考えている。
――株主への還元も手厚い。
3月には配当予想の引き上げと株主優待の拡充を発表し、4月には上限2億円の自己株取得を発表。4月末には自己株25万株を消却した。オオバの配当性向は44.2%(前期実績)と、業種平均33.2%、上場企業平均32.6%と比較して高い水準を維持しており、ROEも11.8%と、業種平均10.7%、東証プライム平均9.6%を上回っている。
――事業を幅広く手掛けているが、中でも成長が期待されるのが「防衛」だろう。地政学上のリスクや世界的な傾向から、防衛費の増額が将来的に見込まれている。
政府は27年度の防衛予算についてGDP比2%の達成を目指している。その中でオオバが手掛けている領域がミリタリーエンジニアリング(防衛土木)である。既に受注している自衛隊施設の調査設計業務を含む「施設の強靭化」については、防衛予算が、23年度から27年度の5年間で4兆円と、23年度までの5年間の1兆円から大きく拡大している。シビルエンジニアリング同様、ミリタリーエンジニアリングについても、オオバの土木技術力を発揮できる分野であると考えている。
――政府の国土強靭化「5か年加速化対策の推進」は今年が最終年度だが、この先はどうなるとみている?
国土強靭化の取り組みは切れ目なく一層強化されるものと考えている。政府予算における公共事業関係費の中で、近年は「防災・減災、国土強靭化」に対する上乗せが続いており、6月6日に閣議決定された「第1次国土強靱化実施中期計画」においては、26年度からの5年間の事業規模が「おおむね20兆円強程度を目途とし、今後の資材価格・人件費高騰等の影響については予算編成過程で適切に反映する」とされており、今年度までの「5か年加速化対策(R3~R7)」の事業規模はおおむね15兆円程度で、これを大幅に上回る規模(1.33倍)が示された。
――拡大には「人」が欠かせない。
企業の持続的成長のためには、信用力、技術力を柱とするインタンジブル・アセット(無形資産)の強靭化が最重要課題であると認識している。採用強化はもちろんのこと前期比3%以上の賃上げを連続実施するほか、若手社員の昇格タイミングの前倒し、セカンドキャリア社員の処遇の改善、有資格者への手当増強など、人的資本への投資は惜しまない。有資格者については23年5月期の488名、24年5月期の509名、25年5月期の517名から、28年5月期までに650名体制の確立を目指す。