ヒット(378A)が7月4日、グロースに新規上場した。屋上や壁面の広告用デジタルサイネージやアナログ看板を手掛ける。初値は公開価格(1,500円)を44.4%上回る2,166円で、後場に入り、ストップ高(2,666円)となった。上場当日の会見で、深井英樹代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
古くて新しい広告……設立1991年で、屋外広告専門の会社。経営理念は「屋外広告のリーディングカンパニーとして世界を変えるメディアを創造する」。屋外広告は古代バビロニア時代からあって非常に古い。一方、広告に特化した大型ビジョンは2010年ぐらいからとまだ15年ほど。屋外広告市場は約3,000億円程度で安定した市場だが、その中でわれわれの主戦場のデジタルサイネージの市場は右肩上がり。古くて新しい広告の専業の会社として屋外広告業界を牽引していきたい。
バラ売りしないのが特徴……ビジネスモデルは非常にシンプルで、ビルのオーナーから屋上、壁面を借りて、われわれの工事でビジョンを作る。(広告主への)販売は一部代理店にお願いするが、直販部隊も持っている。自社媒体は61媒体39面。繁華街、ロードサイド、デジタル、アナログに分かれる。自社デジタル媒体の売上高比率が76%に上る。また、(広告掲出面が)連続するビルにあった場合は1媒体と数える。これをバラバラに売らないのが特徴。例えば首都高速沿いでは、30面(複数のビルの30の連続した広告掲出面)を1媒体として売っている。
年3~5媒体設置へ……自分たちで開発した自社媒体の比重が高いので、高い利益率を上げている。業績は(コロナ禍後の)21年から右肩上がり。自社デジタル媒体が伸びている。今後、特に繁華街の屋外ビジョンの媒体を増やすことで、利益水準を維持しながら売り上げを伸ばしていきたい。KPIで一番重要なのは自社デジタル媒体数。現在は10媒体だが、今後は毎年3~5媒体増やしていきたい。広告主の業態はバランスが取れている。また、渋谷スクランブル交差点はエンタメ系が多かったり、季節感にあわせて飲料系が多かったりなど、媒体ごとに特性がある。
上場で資金調達と信用力向上……1媒体作るのに2億~4億円くらいかかり、自前の資金でやっていくのにはある程度限界がきている。株式市場から資金調達したいというのが上場の一番の狙い。もう一つ、(媒体を設置するビルの)オーナーへの信用力が高まる。特に地方では人脈がないので、上場による信用は非常に重要となる。
全国展開、周辺サービスで成長……成長戦略として、東京の繁華街にまだ大型ビジョンの付いていないところがあり、そこを中心にして展開していく。まだ(大型ビジョンは)東京と大阪にしかないので、名古屋、福岡など全国にも増やしていく。従来は屋上中心だったが、対象にしていなかった壁面にもつけていく。稼働率も現在の43%から50%に上げる。それに加えて力を入れたいのが、屋外広告にプラスした周辺サービス。壁面から飛び出るように見える肉眼3D広告のようなクリエイティブなものや、スマートフォンの位置情報を基に屋外広告の視認エリアにいる人へバナー広告を配信するサービス、屋外広告を軸とした交通、テレビ、ネットなど各種広告とのクロスメディアにもチャレンジしている。
来年度にもシンガポールに進出……松丸敦之会長がシンガポールに3年間滞在して媒体候補地を探してきた。いよいよ交渉を始め、来年度中に最低1媒体を増やしたい。その勢いでシンガポールやASEAN(東南アジア諸国連合)諸国に展開していきたい。私は屋外広告市場は大化けすると考えている。日本でまず圧倒的な市場占有率を作り、ASEAN諸国に打って出たい。(HS)