富裕層向け収益不動産事業を展開しているADワークスグループ(2982・P)の上期(2025年12月期第2Q)の業績は不動産小口化事業の「ARISTO(アリスト)」の成長加速が貢献する形で順調に拡大した。通期の業績予想は営業利益50億円、税前利益40億円(前年同期比57%増)であるが既に上方修正。株主還元策については配当性向が50%内であれば、配当利回り4% 以上を確約する方針を既に発表しており年間配当は予定の14円を超える可能性もある。来年、創業140周年を迎える同社の成長戦略を田中秀夫社長に聞いた。
――上半期の業績が好調でしたがその要因は。
「不動産小口化事業のアリストが引き続き順調で売り上げは109億円(対前年比171.9%)、売上総利益は25.7億円(同150.1%)と年間計画に対する進捗率は半期で55%を超えている。この商品は大都市圏の好立地の優良不動産を、最低出資金額500万円(1口100万円)から販売する不動産投資商品で、新たに不動産投資を始める顧客も増えている。メーンの一棟収益不動産再販事業も好調だが、アリストは相当肉薄するまでに成長している。いつも私が言っている一番のポイントは、年間2万件の情報の中から厳選して契約するのは50件くらいにしろということ。仕入れ担当はアリストの方が、利益率が高そうだと案件を持ってくるようだが、適した案件は多くはない。アリストは顧客が購入してから出口まで最低でも10年か15年ぐらいの期間があるので、不動産価値が長期で維持される案件を厳選している。大事なのはその不動産が、一棟再販向けかアリスト向けのどちらに適しているかを評価する目利きだ」
――オフィス区分事業は。
「オフィス区分商品は小規模のオフィスビルを1棟購入するよりも、1フロア単位で購入するほうが高い投資利回りを得られるケースも多く、既にマーケットが確立している。当社は6月から単価1億~3億円で販売を開始、小口化商品よりも高額の投資を希望する富裕層がターゲット。この商品がいいのはアリストと違って銀行融資が使えること。担保価値を考えると投資に適した物件は東京、大阪などの好立地の優良オフィスビルしかない。既に先行している会社があり、気にはなっていたが、後発のわれわれにはアリスト事業で構築した販売ネットワークを活用できるメリットがある。地銀や税理士事務所、会計事務所などとのネットワークの数は500を超えており、様々な投資商品に適した投資家を紹介してもらうことができる」
――不動産クラウドファンディングを始めた理由は。
「顧客層の裾野を広げようという狙いで若年層も入ってくる。クラウドファンディングなら10億円の物件を1口1万円として10口単位とすると1万人に販売することができる。プライム上場企業としての信用力を背景にした商品だ」
――第2次中計を1年前倒しで達成する勢いだが、来期の計画は。
「25年12月期は、中期3ヵ年計画の2年目に当たるが、既に2回上方修正した。好調なアリストの販売は今期目標の200億円から26年12月期は270億円が見込め、これが業績をけん引していく。27年12月期にROE(自己資本利益率)で13~14%を目指すと発表したが、今期に達成できると見込んでいる」
――株価も年初来高値を更新、課題のプライム上場維持は。
「プライム上場維持基準の流通株式時価総額100億円は、株価250円で達成できる。現在は株価が400円を超えてきたので問題ないとみているが、さらなる企業価値向上の努力を続けていく」