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インタビュー2025年9月18日

トップインタビュー ココルポート 代表取締役社長 佐原 敦矢

障がい者の就労移行支援で好調を維持。法定雇用率引き上げの追い風も

障がい者向けの就労移行支援事業を中心に業績を伸ばしているココルポート(9346・G)。「私たちは一人一人の可能性を信じ、自分らしさと笑顔あふれる社会を共創します。」を企業理念に2012年の設立以来、堅調に事業が拡大している。今では首都圏を中心に123の事業所を構えるまでに成長し、事業を通じてこれまで5,127人(25年現在)もの就職者を輩出してきた。現状と今後の戦略を佐原敦矢社長に聞いた。

――事業内容は
当社は2012年から障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス事業を行っている。就職希望の障がい者の方々に われわれの事業所に来ていただいて、いろいろな教育訓練プログラムを受けていただくことで元気に就職されます。そして、当社は就職した後のサポートも行っている。この就労移行支援事業が売上高の約82%を占める。このほか、最適な福祉サービスの利用計画を立てる計画相談事業やココルポートカレッジ事業という青年期の方に向けた学びの場を提供する自立訓練(生活訓練)サービスも展開する。さらに昨年4月には復職を目指す方向けのリワーク事業も始めた。
利用者の約80%が精神障がい者で、個別支援に重点を置いたきめ細かなサポートを実施、事業所数は8月末で123カ所になった。

――顧客である障がい者の総数や企業側の求人のニーズは
内閣府(24年版障害者白書)などの資料によると全国の障がい者数は、約1,152万人と過去最高を更新し、中でも精神障がい者数は7年間で57%も増えた。当社のメインターゲットである精神障がい者は未就労者が多いので潜在的な需要は高い。

近年、精神障がい者に対する理解は年々高まってきていて、働くチャンスがあったら働きたいと思う人が増えており、企業も雇用に前向きになっている。

――企業には一定数以上の障がい者の雇用が義務付けられた法定雇用率を守る義務もある
昨年改定された法定雇用率は過去最大の引き上げ幅で2.5%になったが、来年はさらに2.7%になる予定だ。現行、1万人規模の企業であれは250人を雇用する義務があり、達成できないと罰金もあるだけでなく、恒常的にショートすると社名が公表される。社会的信用を大事にする企業にとっては大きな問題である。求人数が高止まりしている状況も踏まえ就労移行支援のニーズはますます高くなっていくだろう。

創業来初、年47円配当を実施して株主還元へ

――利用者を増やすためのマーケティング戦略は
インターネットのリスティング広告をやっている。あとは地道に事業所の近くにある行政や支援機関、クリニック、企業、学校を日常的に訪問するリレート活動を行っている。地域とのより良い関係性を構築して信頼される存在になることが重要だ。

――競合企業との差別化で工夫していることは
各種訓練は集団ではなく個別で行っている。学習塾でもきめ細かな個別塾が人気だが、福祉の世界でも一人一人の状況がまったく異なるので、ご利用者さまの目的に寄り添った個別支援を徹底している。事業としては集団支援の方が効率が良いが、それでは支援ではなくて指導になってしまう。どの業界もそうだと思うが、お客さまに対しては目先の効率性や利益ではなく誠心誠意に向き合う努力が必要である。当社の競争力の源泉は福祉のあたりまえを徹底できる実行力だ。また、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、就労定着支援、リワークなどの各事業を一気通貫の障害福祉サービスとしてドミナント(首都圏、中部、関西)展開することで大きなシナジーが発揮できている。

――事業の拡大、成長のためには人材の採用、育成が大事だ
社員の教育研修や福利厚生は充実していると自負している。新卒採用は去年49人、今年は52人が入社し、来年は60人前後となる見込みだ。ほぼ全員が大学・大学院卒で、資格取得者が多い。社会福祉に関心の高い若者が増えているのは頼もしい。

――業績は6期連続の増収増益と好調だが、配当政策は
業績についてはこれまでの活動がご利用者さまやご家族、各種支援機関からも評価されたということだと思う。

また株主還元については、今期(25年6月期)から初めて1株当たり年47円の配当を開始する予定だ。事業拡大に向けた内部留保を確保しながら、さらに来年からは配当性向40%を目安に引き上げ、継続的かつ安定的な配当を実施していく。